研究課題/領域番号 |
23K05363
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部) |
研究代表者 |
秋山 諭 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 主任研究員 (90711672)
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研究分担者 |
辻村 裕紀 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 研究員 (30880885)
山本 圭吾 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 総括研究員 (80503937)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | セルロース分解酵素 / 有殻渦鞭毛藻類 / Alexandrium / 細胞外皮 / 高セルロース有機物 |
研究実績の概要 |
海底に沿岸域や陸域から枯死した海草や顕花植物由来の高セルロース有機物が供給されると、その分解者である微生物が増殖し、付近のセルロース分解酵素活性が高まることが想定される。海域にはセルロースでできた外皮(殻)を持つ渦鞭毛藻類がおり、生活史において海底と密接に関係した段階を経る。そのため、堆積した高セルロース有機物の分解者および分解酵素と、これら渦鞭毛藻類が海底付近で接触し、影響を受けている可能性がある。本研究では、有殻渦鞭毛藻類の生活史の各段階で、このセルロース分解酵素が細胞外皮に損傷を与えるのか、またその損傷が増殖抑制に寄与するのかを明らかにすることを目的とする。2023年度は以下の研究成果を得た。 (1) 天然環境下におけるセルロース分解酵素の分布調査:一部干潟域を除いて環境中のセルロース分解酵素の分布に関する知見は不足している。大阪府南部の小河川の河口部、干潟、アマモ場周辺の砂浜域や沖合の泥底を対象に底質のサンプリングを実施し、環境中のセルロース分解酵素の分布調査を実施した。 (2) シスト形成のための培養株選定:渦鞭毛藻類は生活史の中でシスト形成を行い海底に沈降する。シスト形成時または発芽時へのセルロース分解酵素の影響を調べるために、室内環境下でシスト形成を行う必要がある。所有する培養株について、様々な組み合わせで共培養を行い、シストを形成する組み合わせを探索した。 (3) リター分解試験:高セルロース有機物の分解過程におけるセルロース分解酵素濃度や微生物叢の変化を調べるためにアマモ分解試験を実施する。分解試験用に、大阪湾南部沿岸に打ち上げられたアマモを回収した。アマモ付着生物の影響を除くため冷凍処理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大阪府沿岸域の天然環境下におけるセルロース分解酵素の分布に関する知見が得られ始めている。また、高セルロース有機物の分解試験のための打上げアマモの採取・処理も済んでおり、2024年度に分解試験を開始できる準備が整っている。研究計画では2023年度に実施予定であった、市販セルラーゼを作用させた渦鞭毛藻類の細胞外皮の電子顕微鏡観察は実施できなかったが、試験用の試薬の準備や使用する電子顕微鏡は用意できており、2024年度に実施できる体制は整っている。一方で、培養株を用いた試験については、実施予定に先行する形でシスト形成のための株の組み合わせ探索が終了しており、セルロース分解酵素による影響評価試験に供することが可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
天然環境下におけるセルロース分解酵素の分布調査については、調査を継続するとともに、水中貯木場などセルロース堆積量が多いと考えられる地点でのサンプリングも実施する。また、リター分解試験を開始し、アマモの分解過程におけるセルロース分解酵素活性の変化や分解前後における微生物群集の解析を実施する予定である。さらに、室内環境下でのシスト形成が可能となったことから、有殻渦鞭毛藻類の栄養細胞だけではなく、シスト形成時・発芽時にセルロース分解酵素を添加することで、生活史各段階への酵素による影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に実施予定であったセルロース分解酵素活性の委託測定を、調査研究計画の見直しにより2024年度に変更したため、委託費が未使用額として発生した。また、リター分解試験を天然環境下での実施から飼育施設内での実施に変更したため、設置等にかかる費用が軽減された。これらの理由で発生した未使用額は、2024年度以降に実施する委託測定や微生物叢解析の検体数増加に充てる予定である。
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