研究実績の概要 |
漁業で使われる道具がどの程度海洋で失われているかを調べる方法を提示するために,長崎県のイセエビ刺網漁業を研究対象として選定し,今年度は漁具設計の把握と海中に残留した漁具(ALDFG)の発生状況,耐圧試験による漁具に装着する無線識別タグ(RFIDタグ)の選定,RFIDタグを用いた漁具マーキングを実施した。 2つのイセエビ刺網漁場(海域面積,約14,000 m2と約7,400 m2)において2回ずつ,スキンダイビング,水中ドローンまたはスクーバ潜水により海底のALDFGの探索を行った。これらの海域では3個のイセエビ刺網(総重量12.5 kg)と種類の異なる刺網が巻き固まったもの(63.7 kg)が発見され,漁具の逸失が起こっていることが示された。 RFIDタグメーカー数社と相談を行い,刺網漁具へのマーキングには,陸上である程度の距離から存在を確認可能なUHF帯のRFIDタグを採用することとした。これらRFIDタグのうち,洗濯物に取り付けて水中で使用される一般的なランドリータグ2種類,耐熱・耐久性に優れるTITAN generalタグ,柔軟な樹脂でコーティングされたSlimFlexタグ2種類の5種類について,調査船から深さ50から100 mの海中に10 mずつ5分間隔で垂下して,その後,ID番号を読み取る試験を複数回実施した。その結果,読み取りミスが全く生じず,かつ小型で柔軟性に富むSlimFlexタグのうち,より小型の H3ランドリータグを採用することに決定した。H3ランドリータグは2023年11月から協力漁業者のイセエビ刺網の浮子綱と沈子綱に装着して耐用試験を実施中である。
|