研究課題/領域番号 |
23K05374
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
田中 千香也 東京医科大学, 医学部, 講師 (20779813)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | イカナゴ / 耳石 / 夏眠 |
研究実績の概要 |
イカナゴ属魚類(以下,イカナゴ)は沿岸生態学的にも水産資源的にも重要な魚類である.一方,日本各地で資源量が激減しており,禁漁措置などさまざまな対策が行われているものの回復するに至っていない.夏季の高水温期にみられる休眠行動(夏眠)がイカナゴ再生産の鍵となるが,天然魚ではその開始時期についての情報を得ることは難しい.現在,一般的に行われている3種類の耳石のうちの扁平石を用いた解析手法は仔稚魚期の日齢は正確に算出できるが,夏眠開始時期に当たる未成魚の日齢は解析不能である.本研究では,3種類の耳石のうちの礫石に着目し,イカナゴの夏眠の”時期”を明らかにするために,(1)礫石による長期間にわたる日齢解析法,(2)夏眠期を特定するための手法,を確立することを目的とした. 本研究の1年目は,体長 26.6 - 29.9 mmの個体(n=7)を用いて扁平石と礫石の輪紋数の比較を行った.まず,イカナゴの礫石の摘出から走査型電子顕微鏡での観察までの一連の工程の最適化を行った.次に,同一個体の扁平石と礫石を走査型電子顕微鏡で観察し,それぞれの輪紋数を計数し比較した.その結果,各個体の扁平石の輪紋数を基準としたとき,礫石の輪紋数の差は±3の範囲(最頻値,0)であり,扁平石と礫石の輪紋形成に大きな差は見られなかった.また,夏眠が耳石微細構造に及ぼす影響を調査した結果,夏眠期では耳石の結晶構造が変化することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
礫石の摘出から走査型電子顕微鏡での観察までの一連の工程の最適化および夏眠期の個体の礫石を用いた耳石解析法の検討に時間を要したため,当初予定していた解析個体数に達しなかった.
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今後の研究の推進方策 |
稚魚期の解析個体数を増やし,扁平石と礫石の輪紋数の比較およびふ化輪周辺の難読領域の補正式を構築し,礫石による長期間にわたる日齢解析法の確立を進める.また,礫石に記録された夏眠開始期にみられる特徴的な変化の探索を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗の若干の遅れから次年度使用額が生じた.また,今年度は学会発表を行わなかったため,旅費を使用しなかった.繰り越した助成金は,次年度請求分と合わせて消耗品の購入に充てる予定である.
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