研究課題
Microcystin-LRは,その曝露条件次第で正反対の細胞応答である細胞毒性と細胞増殖活性を促進する。近年、我々はMicrocystin-LRの新奇で独立な2つの機能性として上皮・間葉転換(EMT)様/間葉・上皮転換(MET)様の形質転換および細胞骨格再編成の誘導能を発見した。このユニークなMicrocystin-LRの新奇な機能性の誘導機序の解明をめざすことで細胞毒性と細胞増殖活性の細胞応答の分岐機序を明らかにすることを目指し解析した。以下に得られた結果をまとめる。Microcystin-LR誘導型のEMT様/MET様形質転換細胞のHEK293-OATP1B3-FLおよび細胞骨格再編成細胞のHEK293-OATP1B3-ADは、親細胞のHEK293-OATP1B3に比べて低酸素・低栄養・薬剤耐性等のストレス抵抗性を獲得していることが確認された。そこで、これらの2種類の形質転換細胞の前駆細胞であるHEK293-OATP1B3-preFL細胞も含めてストレス抵抗性の獲得、そしてその分子機序の解析を詳細に行った結果、接着性のHEK293-OATP1B3-FL細胞では、Eカドヘリンのタンパク質発現量が減少し、Nカドヘリンには大きな変化は認められなかった。一方、浮遊性のHEK293-OATP1B3-preFL細胞においてカドヘリンスイッチが遺伝子発現レベルにおいて検出された。すなわち、Eカドヘリンの発現量が低下し、Nカドヘリンの発現量が上昇した。また、HEK293-OATP1B3細胞を用いてMicrocystin-LRの細胞毒性抑制能を有す食材の探索を試みた結果、ゴマの葉と実、オリーブの実、アオサ、柑橘類数種の実、果皮、葉、ショウガ、ウコン、ブロッコリースプラウト、コーヒーの実と葉、サトウキビの葉の抽出液にMicrocystin-LRの細胞毒性減弱能が検出された。
2: おおむね順調に進展している
当初の令和5年度の研究実施計画の①Microcystin-LRの毒性発現機序および新たな機能性の探索、および②Microcystin-LRの毒性抑制能を有す食材の探索の双方ともについては順調に研究成果が得られつつある。
当初の令和6年度の研究実施計画の①Microcystin-LRの毒性発現機序および新たな機能性の探索、および②Microcystin-LRの毒性抑制能を有す食材の探索をさらに進展させる。すなわち、①については、Microcystin-LR誘導型の形質転換細胞の性状解析を進め、低栄養抵抗性の分子機序の解明の糸口を探る。②においては、生物資源の活性本体の同定を試み、それぞれの物質と活性の程度の構造・活性相関について解析する。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件)
Toxicon
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.toxicon.2023.107592
Biochimie
巻: 212 ページ: 123-134
10.1016/j.biochi.2023.04.012
Planta Medica
巻: 89 ページ: 616-623
10.11055/a-1978-8768