研究課題/領域番号 |
23K05399
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
松本 拓也 県立広島大学, 地域創生学部, 准教授 (30533400)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | フグ / フグ毒 / テトロドトキシン / 肝臓 / 組織スライス / ホルモン / 遺伝子 / 次世代シーケンス |
研究実績の概要 |
フグ肝臓におけるフグ毒テトロドトキシン(TTX)の蓄積と排泄の制御機構を明らかにするため,トラフグを試験魚として以下の項目を実施した。 1)トラフグ肝臓組織スライスのTTX蓄積に及ぼす性成熟関連ホルモンの影響確認:令和5年度は,トラフグ肝臓組織スライスのTTX蓄積量の増減に効果を示す性成熟関連ホルモンを調べた。終濃度が0.5 μMになるように性成熟関連ホルモンを加えた培地とホルモン無添加の培地を用意し,養殖トラフグのオス3尾とメス7尾の肝臓から作成した組織スライスを培地に加えて24時間培養後,TTXの取り込み試験を行って,TTXの蓄積及ぼすホルモンの影響を調べた。その結果,雌雄ともにアンドロゲンで培養すると,肝臓組織スライスに蓄積するTTXは対照区に比べて比較的保持される傾向が見られた。
2)トラフグ肝臓組織スライスの次世代シーケンス解析:TTX蓄積試験に使用したトラフグ10個体のうち,3個体の肝臓組織スライスを用いて,性成熟関連ホルモンとの前培養で発現量が変動する遺伝子を次世代シーケンス解析にて調べた。その結果,β-エストラジオールで前培養したトラフグ肝臓組織切片では,ビテロゲニン様のタンパク質をコードする遺伝子のほか、性成熟に関わる多数の遺伝子が発現増増大し,また,様々な代謝経路に関わる遺伝子で増減が見られた。プロゲステロンで前培養したトラフグ肝臓組織切片では,神経発達や細胞の増殖分化など様々な生体機能に関わる遺伝子で増減が見られた。さらに,テストステロンで前培養したトラフグ肝臓組織切片では,プロゲステロンの場合と同様に細胞増殖やエネルギー生産などの生体機能に関わる遺伝子で増減が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トラフグの肝臓組織スライスを用いたTTX蓄積試験において,性成熟関連ホルモンによるTTX蓄積に及ぼす影響を調べた結果,ホルモンの種類に応じて肝臓組織スライスのTTX蓄積量に変動が見られたことから,ホルモンに応答してTTXの蓄積を制御する何らかのメカニズムがトラフグの肝臓にあることが確かめられた。また,ホルモンと培養したトラフグ肝臓組織スライスを次世代シーケンスによる遺伝子発現解析に供した結果,ホルモンに応答する既知の遺伝子のほかに,機能未知の新規トランスポーターと予想される数種の遺伝子に発現変化が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の成果に基づき,引き続き,フグ肝臓におけるTTXの蓄積と排泄の制御機構の特定とその機構の主要な関連分子と予想されるフグ毒トランスポーターの特定と機能解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度のおいて,培養液に添加するフグ毒テトロドトキシン(TTX)の濃度を低濃度に抑えた結果,TTX標準品の購入数を抑えることができたなど,消耗品の購入額に余剰が生じた。令和6年度は,研究代表者が異動して所属が変わったことから,本研究課題を遂行するために必要な消耗品等を購入して研究室を稼働させ,令和5年度の成果と年度計画に基づき,引き続き,フグ肝臓におけるTTXの蓄積と排泄の制御機構の特定とその機構の主要な関連分子と予想されるフグ毒トランスポーターの特定と機能解析を実施する。
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