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2023 年度 実施状況報告書

農地改革後の地主運動の歴史的性格と農地報償法に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K05431
研究機関帝京大学

研究代表者

玉 真之介  帝京大学, 経済学部, 教授 (20183072)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワード農地改革 / 土地取上 / 農地改革違憲訴訟 / 地方軍政部 / 農地闇売買 / 社寺教会有地
研究実績の概要

当該年度は、既存研究において未解明の農地改革の実施過程における地主運動の展開を研究対象として、これまで「地主制の反動」と一括りにされてきた、いわゆる「土地取上」、陳情・訴願・訴訟、さらに東北地方を中心に広がった「農地改革違憲訴訟」について詳細な事実の掘り起こしと、その分析を行った。その結果、それらがいずれも150万戸を越える庶民と言うべき中小零細な耕作地主を担い手とするものであり、しかも、二足三文の価格での強制買収という理不尽が仕打ちに対する切実な叫びや行動であることを明らかにした。しかるに、GHQはそうした叫びや行動を地方軍政部を使って県当局と一体で鎮圧し、とりわけ、「違憲訴訟」には怯えて、1948年2月に「第2の覚書」を出し、さらに司法当局にも介入して、その運動の鎮圧を図ったことを明らかにした。
続いて、農地改革の後半において、二足三文で旧小作人に売り渡された農地が数万円の高値で闇売買される実態について、初めて詳細な分析を行い、その原因が農地改革の制度設計において、買収価格を「自作収益価格」で固定し、小作料も定額金納としたところにあり、また、農地改革の過程で、農地を貸したら返してもらえないという観念が広く形成された結果として、高くても農地を買う競争が生じて、農地価格の高騰という戦後の最大の農地問題が生じることを明らかにした。合わせて、既存研究ではまったく等閑視されていた社寺教会有地の農地改革についても初めて具体的な分析を行った。
これらの研究成果は、3つの学会で発表し、2つの論文にまとめた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

既存研究が農地改革の結果にばかり焦点を当て、実施過程における諸問題の研究を怠ってきたため、実施過程を詳細に分析する必要が生じ、予定よりも実施過程の分析に時間が取られている。ただ、それにより当初の計画の想定よりも詳細な研究を行うことができた。
他方、当初計画した社寺に対するアンケート調査は、浄土宗総合研究所、浄土真宗本願寺総合研究所と相談の結果、有効な成果が得られない見通しとなったため、方針を転換して、各地の仏教界に調査を行うこととした。
以上のような計画の変更を行ったが、内容的にはおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

今年度に農地改革の実施過程における地主運動については、ほぼ研究を終えることができたので、次年度は1952年の講和条約発効後における地主運動に焦点を当てる。その場合でも、まず農地改革後の地主運動の中心となる香川県の農業再建協同組合運動に焦点を当てて、香川県の調査を集中的に行い、その運動の経過と特質を明らかにする。合わせて、集団小作地取上運動が起きた石川県と福岡県の現地調査を行い、その実態について分析を行う。
今年度に着手した社寺教会有地の農地改革についても、継続調査と分析を行う。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 農地改革の真実-その歴史的性格と旧地主報償問題-(その7)2024

    • 著者名/発表者名
      玉真之介
    • 雑誌名

      帝京経済学研究

      巻: 57(2) ページ: 105-153

  • [雑誌論文] 農地改革の真実-その歴史的性格と旧地主報償問題-(その6)2023

    • 著者名/発表者名
      玉真之介
    • 雑誌名

      帝京経済学研究

      巻: 57(1) ページ: 69-120

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 19世紀の農奴解放と地租改正-ロシアと日本の「近世」と「近代」-2023

    • 著者名/発表者名
      玉真之介
    • 雑誌名

      研究年報人文編

      巻: 29 ページ: 1-54

  • [学会発表] 社寺教会有地の農地改革2024

    • 著者名/発表者名
      玉真之介
    • 学会等名
      日本農業史学会
  • [学会発表] 「農地改革」という虚像2024

    • 著者名/発表者名
      玉真之介
    • 学会等名
      日本農業経済学会
  • [学会発表] 19世紀の農奴解放と地租改正2023

    • 著者名/発表者名
      玉真之介
    • 学会等名
      政治経済学・経済史学会
  • [図書] ロシアを見れば日本がわかる:日ロ比較農業史2024

    • 著者名/発表者名
      玉 真之介
    • 総ページ数
      164
    • 出版者
      八朔社
    • ISBN
      978-4-86014-115-8
  • [図書] 農業基本法2.0から3.0へ2023

    • 著者名/発表者名
      玉 真之介、草苅 仁、木村 崇之
    • 総ページ数
      231
    • 出版者
      筑波書房
    • ISBN
      978-4-8119-0654-6

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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