研究課題/領域番号 |
23K05504
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
木村 直子 山形大学, 農学部, 教授 (70361277)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 原始卵胞 / 維持 / 卵巣 / 新生仔 / マウス |
研究実績の概要 |
野生型よりも、原始卵胞数が多く、拡張後の備蓄原始卵胞プールが維持されるマウスモデル(D11投与、あるいはシスチン・グルタミン酸トランスポーター遺伝子欠損(xCTKO))の原始卵胞プールの維持に寄与する主要分子とその経路の特定を目的に、取得済みのRNA seq情報からの候補分子と、最近報告されたクロマチンのエピゲノム制御に関わる分子の発現動態を詳細に調査し、以下の結果を得た。 1.生後60時間のD11投与マウス卵巣のRNA-seq.で得られた差次的遺伝子から、発現が有意に低下していた活性酸素種産生酵素Nox1タンパク質の発現量の調査を行った。D11投与マウスでは低い発現傾向がみられた。細胞内活性酸素量が低下し、Wntシグナル経路が抑制されていることが考えられた。一方、RNA-seq.で顕著に高発現していたRad50タンパク質は、D11投与マウスと対照区で、明確な差がみられなかった。 2.ヒストン修飾因子であるH2AK119ubの形成を触媒することで、ポリコーム遺伝子を抑制するはたらきを持つPRC1は、減数分裂前期に入ると減数分裂関連遺伝子のプロモーターに結合することで転写を抑制し、卵母細胞を減数分裂前期で停止させ、原始卵胞の休眠状態を維持する。生後60時間のD11投与マウス卵巣では、PRC1タンパク質は、予想と異なり、卵細胞核内ではなく核周辺に局在がみられ、対照区と比較して高い発現傾向がみられた。 3.一連の卵胞培養-卵成熟培養-体外受精の培養系を構築し、二次卵胞から、低率であるが受精卵が得られた。培養系の改良余地があり、そのアプローチとして、培養中の卵胞に及ぼす酸化ストレスの影響を検討する目的で、SOD1遺伝子欠損(KO)マウスの卵胞で検証を行ったが、予想に反し、SOD1KOマウスの卵胞は、形態学的には野生型と顕著な差がないまま卵胞発育をし、一定の割合で卵成熟がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、申請書の研究計画3項目中、項目1と2の検討を進めた。クロマチンのエピゲノム制御による原始卵胞の維持能について、PRC1の発現局在が、当初の予想と異なったため、2024年度は、PRC1活性を示すH2AK119ubの核局在化なども含め、引き続き検討する。 項目2については、当初計画していた新生仔卵巣の器官培養系での検討よりも、卵胞培養系の方が使用可能な卵子を得られやすいと考え、卵胞培養系で原始卵胞の維持能を検証するために、2023年度は、当研究室の卵胞培養系の構築を進め、改良の余地はあるが、プロトコールは概ね完成した。 以上の理由から、概ね順調に進んでいるものと認識される。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はD11投与マウスを対象に研究計画の項目1の検討を行ってきたが、2024年は、シスチン・グルタミン酸トランスポーター遺伝子欠損(xCTKO))マウスにおいても同様の調査を行いながら、研究計画の項目1および2の未実施の部分についても進める。またxCTKOマウスの卵胞培養系での発生能についても検証し、D11投与マウスとの違いがあるのかについても注視して、進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請当初の研究費総額より、採択時の総額が少なかったため、2024年度の研究に支障がないように、2023年度の使用金額を調整したため。
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