研究課題/領域番号 |
23K05520
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
伴 智美 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (90378323)
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研究分担者 |
諏訪部 圭太 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 教授 (50451612)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | スイギュウ / ウシ / コレステロール / 脂質 / 代謝メカニズム |
研究実績の概要 |
2023年度の研究では、ウシおよびスイギュウのコレステロール代謝機能の違いについて、遺伝子レベルで比較するため、フィリピン共和国のウシおよびスイギュウそれぞれ3頭の肝臓からRNAを抽出し、RNA-Seq解析を行った。HISAT2を用いてウシのリファレンスゲノムおよびスイギュウのリファレンスゲノムを参照配列として、それぞれのリファレンスゲノムに対してRNA-Seq解析で得られたウシとスイギュウサンプルをマッピングし、StringTieを用いて各リファレンスゲノムに対する既知の遺伝子のアセンブリーを行った。発現変動遺伝子(DEG)解析によって既知遺伝子のリードカウントを発現量データとしてFPKMで正規化した後、DEseq2によるfold changeおよびnbinomWaldTest解析によってウシとスイギュウで発現に有意差がある遺伝子を調べた。その結果、DEG解析において種間に有意な差が見られた遺伝子が2038個あったが、その中にコレステロールの輸送系及び合成系に関わる遺伝子はみられなかった。次に、DEG解析でウシおよびスイギュウで有意に高発現した遺伝子について、Gene Ontology(GO)解析により遺伝子機能を分類し、ウシとスイギュウ間で有意な上位10種の GO termについて遺伝子機能の類似性を比較した結果、ウシでは3つのカテゴリ(生物学的プロセス、分子機能、細胞の構成要素)において有意にエンリッチしているGO termがあったが、スイギュウでは少なかった。KEGG pathway解析によってウシとスイギュウのコレステロール代謝経路上の遺伝子発現を比較した結果、ウシと比較してスイギュウではではいくつかのコレステロール輸送系に関わる遺伝子が高発現しており、スイギュウはウシと比較してコレステロールの輸送が活発でその消費が高い可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究ではウシおよびスイギュウの肝臓サンプルからRNA抽出を行い、RNA-Seq解析をおこなったあと、DEG解析、GO解析、KEGG pathway解析を行った。これは当初の計画のとおりであり、研究の進歩状況に遅れはない。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度からの研究ではRNA-seqで得られたデータを基に、さらにウシおよびスイギュウ間の違いについて詳細に解析を進め、二種間で有意な違いがみられる脂質代謝およびコレステロール代謝に関わる遺伝子を見つけだす。また、フィリピン共和国においてウシおよびスイギュウを用いた動物実験を行う。動物実験においてはウシおよびスイギュウを各種5頭ずつ用い、同じ飼料で5か月間肥育を行う。実験最終日にと殺を行い、肝臓、脂肪組織(皮下脂肪、腎周囲脂肪、腹腔内脂肪)、筋肉などの体組織を採取し、体組織サンプルからRNAを抽出する。 その後、RNA-seq解析によって、任意のサンプルの解析により二種間で有意な違いがみられた脂質代謝およびコレステロール代謝に関わる遺伝子について、リアルタイムPCRによってその発現量の違いについて分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度の予算のおよそ17万円については次年度使用するということで繰り越した。次年度の研究では動物実験を予定しており、実験動物の購入など当初予算よりも多くの予算が必要になることが見込まれるためである。2023年度繰り越した予算については次年度の予算と合わせて研究費として使用する。
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