研究課題/領域番号 |
23K05584
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
水上 圭二郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (20727721)
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研究分担者 |
富安 博隆 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (70776111)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 遺伝性腫瘍 / イヌ |
研究実績の概要 |
本研究は、特定犬種に集積したCHEK2遺伝子における病的バリアントがどのような特徴を有するか解析し、さらにCHEK2遺伝子欠損腫瘍における体細胞ゲノムの特徴や遺伝子発現パターンの特徴を明らかにすることを目的としている。 我々は特定の犬種において、遺伝性腫瘍の原因遺伝子の一つであり、がん抑制遺伝子であるCHEK2遺伝子の機能欠失を引き起こすと予測される生殖細胞系列のバリアントが集積していることを明らかにした。そこで、当該犬種約200頭から抽出したゲノムDNAに対して、このCHEK2遺伝子の機能欠失バリアントの3つの遺伝子型(つまり、ノーマルホモ、ヘテロ、バリアントホモ)ごとの腫瘍の罹患状況を調べたところ、遺伝子型依存的に腫瘍に罹患しやすい傾向があることが明らかとなった。次に、その機能欠失バリアントをヘテロ接合で有する組織球肉腫症例からFNAにて腫瘍組織を採取し、全ゲノムシークエンスを実施、得られたFASTQファイルに対して各種バイオインフォマティクスツールを用いたデータ処理を行うことで、腫瘍組織の体細胞のゲノム解析を行った。その結果、複数の腫瘍関連遺伝子において機能欠失バリアントやミスセンスバリアントなど、その遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列の変化を引き起こす遺伝子バリアントが検出された。現在、同じ検体から取得した腫瘍組織のRNAサンプルを用いてRNA-seqを行なっており、CHEK2遺伝子を中心とした発現解析を実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究で対象となるCHEK2遺伝子の機能欠失バリアントの保有犬の臨床データを整理するとともに、組織球肉腫とリンパ腫の症例から腫瘍サンプルと血液サンプルを採取し解析した。まず、血液サンプル由来のゲノムDNAより対象となるCHEK2遺伝子の機能欠失バリアントの遺伝子型を調べたところ、組織球肉腫はヘテロ接合体、リンパ腫はノーマルホモ接合体だった。さらに、これらの症例の腫瘍サンプルと血液サンプルに対して全ゲノムシークエンスを行い、得られたFASTQファイルを基に、Tumor-Normalモードによるデータ解析を行った。その結果、複数の腫瘍関連遺伝子にアミノ酸変化を引き起こす一塩基多型が検出され、現在構造多型などその他のバリアントについても解析中である。さらに、腫瘍サンプルからRNAを抽出し、RNA-seqを行っており、現在データ解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、当該犬種の腫瘍サンプルの解析を行っているが、最も表現型の変化が顕著に現れると考えられるバリアントホモ接合体の腫瘍サンプルが入手できていない。そこで、今後はサンプリング対象病院を拡大し、より多くのサンプル収集を行うことで、各遺伝子型の腫瘍サンプルのゲノムを解析を可能にする。各遺伝子型のサンプルが集まり次第、逐次シークエンス解析を行い、さらに複数のサンプルが必要なデータ解析を実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、2症例からの腫瘍組織のサンプルに対して全ゲノムシークエンスを実施した。これらのシークエンスは、当初は独立して次世代シークエンサーによるランを実施する予定であったが、他のプロジェクトのシークエンス解析と相乗りすることが可能になったため、想定より安価に実施することができた。そのため、次年度使用額を用いて、翌年シークエンス解析するサンプル数を増やす予定である。
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