研究課題/領域番号 |
23K05592
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
原 聡史 佐賀大学, 医学部, 助教 (80739582)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ゲノムインプリンティング / Igf2-H19 / Beckwith-Wiedemann症候群 / CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
本研究では、Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)の原因である母性H19-ICRの異常高メチル化の分子機構の解明を目的としている。今年度はBWSの表現型を伴う異常高メチル化を引き起こす責任部位を同定するために、申請者が独自にH19-ICRに様々な変異を導入したマウス群(H19-ICR改変マウスパネル)を構築した。具体的には、H19-ICR内部のSox-Oct結合部位(SOBS)および4箇所のCTCF結合部位(CTS1-CTS4)について、単独もしくは様々な組み合わせで変異を導入したマウスを計10系統作出した。全ての変異をそれぞれ母性遺伝したマウス新生仔を取得後、体重および組織重量の測定を行い、変異マウスの表現型を評価した。その結果、SOBSあるいはCTS1-4を単独で変異した場合は顕著な表現型を示さなかったが、SOBS/CTS3ダブル変異、SOBS/CTS4ダブル変異およびCTS3/CTS4ダブル変異の3系統でBWS様の過成長が観察された。特にSOBS/CTS3変異を母性遺伝した場合に過成長個体の出現頻度が最も高いことが明らかになった。これらの変異マウス新生仔の各組織におけるIgf2およびH19遺伝子の発現量および発現アレルを解析したところ、3系統すべてでインプリント遺伝子の発現異常が生じていたが、特にSOBS/CTS3変異で最も強い影響が認められ、表現型解析の結果と一致した。さらにDNAメチル化解析の結果、SOBS/CTS3変異において母性アレルH19-ICR全域が高メチル化されていた。これらのことから、SOBSおよびCTS3がBWS様の過成長を引き起こす責任配列であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H19-ICR改変マウスパネルに関して、現在までにタンパク結合配列を単独で変異させたマウス5系統、ダブル変異5系統の計10系統を作出することができ、当初目標であった令和5年度までに表現型解析を完了させることができた。このことから概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、母性H19-ICRに生じるDNAメチル化異常の発生過程における推移を解析するため、特に表現型が認められた系統について、卵子、胚盤胞およびE6.5胚を用いてDNAメチル化状態の解析を行う。また、4C-seq解析に関しても、プライマーの選定ならびにマウス胚を用いた条件検討を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの作出および解析が当初想定していた予算より少ない費用で行うことができたために生じた。これらは次年度のマウス作出および維持費、発現解析およびメチル化解析のための消耗品費に充てる。
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