研究課題/領域番号 |
23K05605
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
谷藤 章太 東京医科大学, 医学部, 助教 (50529245)
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研究分担者 |
川原 玄理 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40743331)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / EP4 / 薬剤スクリーニング / 疾患モデル動物 / 腹部大動脈瘤 |
研究実績の概要 |
PGE2受容体EP4について、PGE2-EP4シグナルが関与する疾患での過剰なEP4発現の分子機序を明らかにし、新たな治療法としてEP4の発現を抑制して疾患進行を抑制する全身への副作用が少ない化合物を探索することが目的である。生体内環境を反映したEP4遺伝子の発現機序の評価が可能なゼブラフィッシュをモデルとして使用し、EP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュの作製を試みた。 現在、ゼブラフィッシュEP4bのプロモーター候補領域を導入したEP4レポーターゼブラフィッシュの系統の樹立を目標とし、2種類の長さの異なる領域 (1246 bp、315 bp)を導入した個体を飼育・維持している。EP4レポーターゼブラフィッシュは受精後1日から6日までのEGFP発現をin vivoで確認することができた。共焦点顕微鏡を用いて観察した結果、既報の野生型ゼブラフィッシュを用いたin situ hybridization実験の結果による発現のパターンに類似している点が見られた。また、ゼブラフィッシュでのEP4b発現を定量的PCRで確認した。PGE2-EP4シグナルが関与する腹部大動脈瘤発症の起点等となるEP4過剰発現の誘導メカニズムは現在まで未解明であり、作製したEP4レポーターゼブラフィッシュを用いることでEP4発現を制御する分子機序の解明が期待できる。 研究代表者は独自の腹部大動脈瘤モデルゼブラフィッシュを作製しており、稚魚での大動脈径の増大を指標とすることで、治療薬候補となる化合物を短期間にin vivoで絞り込むことが可能である。これらの研究成果は現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに作製したEP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュの各個体のEGFP蛍光のパターンを確認しながら世代交代を継続し、個体数を維持している。また、表現型がhomoとなる個体を得るための交配を始めており、実験に使用できるまでに3か月から半年ほどの時間がかかる見込みである。現在は定量的PCRによりEP4とEGFPの発現パターンの比較を試みている段階であり、Ang II投与によるゼブラフィッシュモデルの論文投稿を優先させていたことにより、やや進展が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、EP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュの成体を用いて、各臓器でのEP4とEGFPのmRNA発現に相関があるかを定量的PCRにより検討する。また、受精後の発達に応じたmRNA発現についても同様に検討する。EP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュの稚魚に関しては、発達に応じて発現が見られるEGFPシグナルがどの部位に発現しているかを共焦点顕微鏡を用いて詳細に検討する。作製したEP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュを用いて化合物ライブラリー (LOPAC1280、Sigma)のin vivoスクリーニングを行い、EP4発現へ影響を及ぼす化合物を見出す。化合物ライブラリーには各種受容体の作動薬・拮抗薬や、キナーゼ・プロテアーゼ等の酵素活性を制御する物質などの様々な作用機序を持つ化合物が含まれているため、EP4発現を制御する分子機序の候補を様々な細胞内シグナル伝達経路の点から検討する。EP4発現を制御する分子機序を同定できれば、EP4発現を抑制する化合物の探索が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
EP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュの表現型がhomoとなる個体を得るための交配のため、長期間飼育して実験準備をしたために当初の予定より時間がかかり、EP4-EGFPレポーターゼブラフィッシュの遺伝子発現を確認する実験に使用する消耗品や化合物ライブラリー等のスクリーニング関連の消耗品が未購入である。また、AngII投与疾患モデルゼブラフィッシュに関する実験結果をまとめた論文投稿に時間がかかっていることも理由の1つである。そのため、次年度は論文投稿費・英文校正費として使用し、研究成果を論文発表する予定である。
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