研究課題/領域番号 |
23K05613
|
研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
下澤 律浩 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 主任研究員 (50300786)
|
研究分担者 |
揚山 直英 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 主任研究員 (50399458)
高林 秀次 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 准教授 (70372521)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | カニクイザル / ライソゾーム病 / 神経疾患 / ゲノム編集 / リソース |
研究実績の概要 |
CLN2変異ヘテロ型個体とCLN2野生型個体(以後、野生型)との交配による妊娠率は、19.1%(25/131)であった。一方でCLN2変異ホモ型個体を出産可能なヘテロ間での妊娠率は、5.0%(1/20)であった。また当該年度中に、ヘテロ雌雄間での出生は5例あり、遺伝子検査を行ったところ2例が変異ホモ型であり、ヘテロ型および野生型はそれぞれ2例および1例であった。一方、ヘテロ型と野生型の間での出生仔8例では、変異ヘテロ型4例および野生型4例であった。また、自然交配の成立がよくない結果として妊娠率が低かったと考えられることから、積極的に妊娠の成立を高めることを狙って2組のヘテロ雌雄間で実施した人工授精によって2組共に出産し、その仔は変異ホモ型およびヘテロ型であった。既に安楽殺された変異ホモ型で異常値が検出されたクレアチンキナーゼ(CK)において、離乳時(6-8ヶ月齢)の変異ホモ型2頭のCK値に異常は見られなかった。さらに、i-GONAD法を用いたゲノム編集個体の作出については、カニクイザルの卵管内にある卵にi-GONAD法による電気刺激でゲノム編集試薬が導入できるか否かを予め確認するために、安楽殺によって採取した卵管内にマウス受精卵を注入し、蛍光色素が導入の可否を検討した。その結果、卵管から採取したマウス卵に蛍光が確認されたただけでなく、安楽殺個体が排卵していたことから、その卵管内から回収されたカニクイザル卵にも蛍光が確認できた。これらのことから、i-GONAD法による体外操作なしでのゲノム編集の成功の可能性が大いに期待できる結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CLN2のヘテロ変異を持つ個体の繁殖において、決して高い妊娠率が得られている訳ではないが、これはコロニー全体の妊娠率と比較しても遜色ない。また、新たに遺伝子変異をホモ型に持つ個体が複数産まれたことはCLN2疾患個体の今後の生産に繋がる結果であった。一方、i-GONADによる新規NCL遺伝子変異個体の作出に向けた検討は遅延しているが、他実験の安楽殺個体から採取される卵管が順調に得られなかったことにある。しかし、そのような中で行った検討によってマウス卵だけでなく、自然排卵していたカニクイザル卵にも蛍光が確認できたことは大いに評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
CLN2変異個体を整備するために、生まれた個体の遺伝子検査を進め、それらの遺伝子型を特定し、繁殖コロニーにおけるCLN2変異個体による変異ホモ個体の生産基盤を強化する。すでに生まれた変異ホモ型個体においては、疾患症状が現れる前から行動解析を実施し、発症時期、発症時の症状、症状の経時的観察を実施して詳細なデータを取る。i-GONAD法によるゲノム編集個体の作出においては、実際に生体を用いた実験に着手する予定である。
|