研究課題
ヒトにおける化学物質曝露による肝毒性を精度よく検出できるin vivo評価系の確立を目指して、マウス薬物代謝酵素の異物代謝への干渉が最小限に抑えられた肝臓ヒト化マウスの作製を実施している。シトクロムP450酸化還元酵素(Por)欠損マウスは、肝臓ヒト化マウスの肝臓に残存するマウス肝細胞の影響を低減するために作製された。これまでに樹立した動物ではCyp3a11プロモーター下でFlippase遺伝子を挿入していたが、肝組織のPor欠損肝細胞の割合は個体によって多少ばらつきが認められた。そこで、より確実にかつ安定して肝組織のPorを欠損させるために、アルブミンプロモーター下にFlippase遺伝子を挿入した動物を作製した。現在、肝組織のPor発現分布や肝薬物代謝能の評価を進めている。また肝臓ヒト化マウスの肝外組織のマウス薬物代謝酵素は異物代謝に影響を及ぼしている。げっ歯類特有の血漿Ces1c酵素は肝臓で作られるが、肝臓ヒト化マウスの血漿にも存在している。肝臓ヒト化マウスの肝臓以外の組織の薬物代謝能をよりヒトに近づけるため、Ces1c遺伝子のエキソン5を含む領域を欠損したマウスを作製した。本マウスはウェスタンブロット解析により血漿のCes1cタンパク質が欠損していること、さらに血漿のオセルタミビル加水分解酵素活性が著しく低下していることを確認した。現在、Ces1c欠損肝臓ヒト化マウスの特性解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
改良型シトクロムP450酸化還元酵素欠損(Por cKO)マウスおよびげっ歯類特有の血漿Ces1c酵素欠損マウスを作製した。マウス血漿Ces1c欠損マウスは期待されている表現型が得られていることを確認した。現在、改良型Por cKOマウスの特性解析を進めている。
改良型シトクロムP450酸化還元酵素欠損(Por cKO)マウスおよびげっ歯類特有の血漿Ces1c酵素欠損マウスを基盤として肝臓ヒト化マウスを作製し、化学物質投与後の未変化体と代謝物の体内動態や毒性の評価を進める。肝臓ヒト化マウス由来の肝細胞を用いたin vitro薬物動態・肝毒性評価系も活用しながら、新しい肝臓ヒト化マウスがより精度よくヒトにおける化学物質の体内動態および毒性を予測するための優れた実験動物であるかどうか検証していく。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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