研究課題/領域番号 |
23K05626
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
津山 淳 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (20760101)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / ミクログリア / 神経修復 / エピゲノム解析 / 分子標的薬 |
研究実績の概要 |
脳損傷後に誘導される組織修復に寄与する修復性ミクログリアが修復後にどのような運命を辿るのかはこれまで不明であった。修復後のミクログリアの運命追跡を行うことができるマウスを申請者は既に開発しており、修復後ミクログリアが脳組織内に残存することを証明している。本年度は、修復後ミクログリアが修復の記憶を保持しているかを明らかにするため、修復後ミクログリアのATAC-seqによる解析を行った。その結果、修復後ミクログリアにおいては正常脳のミクログリアには見られないオープンクロマチン領域が多数存在することが明らかとなった。修復後ミクログリアに特徴的なオープンクロマチン領域近傍遺伝子のオントロジー解析を実施したところ、骨髄系細胞分化や貪食能に関わる遺伝子群が濃縮されていることが明らかとなった。これらの結果から、ミクログリアには脳修復の記憶がエピジェネティックなレベルで残っており、修復の再開を起こせる可能性が存在する。次に、ミクログリアによる修復能を再開させるため、慢性期脳梗塞モデルマウスにおいて、申請者が開発した修復終了阻害因子の投与実験を行ったところ、マウスの神経症状が改善するという結果を得た。この結果は、中枢神経系損傷後の回復期を終えたとしても、再び機能回復を起こしうることを示しており、これまで不可能であった回復の再開という治療法に繋がりうるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
修復後ミクログリアの性質を明らかたなり、開発した修復終了阻害薬により機能回復の再開という結果を得ることができた。これにより本研究課題の3分の2を初年度において達成することができたため、予想以上の進展と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はミクログリアの修復遺伝子群の発現持続により、神経症状がどのようなメカニズムで回復しているのかを明らかにする。そのためにミクログリアを含めた全脳細胞を対象とした解析を実施し、神経症状回復の分子機序の詳細を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
・当初の研究計画通りに進めたものの、消耗品の値上がりや機器の修理費用等が予想以上にかかったため、わずかながら次年度使用額が生じた。 論文の作図に使用しているIllustratorの更新料に企てる予定である。
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