研究課題/領域番号 |
23K05637
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石井 英治 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (10835698)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | lncRNA / 腸炎ビブリオ / べん毛 / 機能性RNA |
研究実績の概要 |
細菌におけるlncRNAは、真核生物に比べると数が少なくその多くの機能や役割は十分に理解されてないが、生命のコアプロセスにおいて重要な役割を果たしていることが知られている。一方で、その長さから配列の保存性や塩基対形成から機能を予測することは難しく、未だ機能が明らかになっていないものが多い。本研究課題では、細菌のlncRNAが如何にして生化学的機能を発揮し生物学的役割を果たすのかという問いに、腸炎ビブリオのトランスクリプトーム解析から得られたlncRNA候補の機能を明らかにすることで迫る。
これまでの研究で、低塩濃度や胆汁酸の存在によって腸炎ビブリオ病原性アイランド(Vp-PAI)上にコードされる遺伝子(lncRNA candidate4, lncRNAcan4)の発現が誘導され、その発現依存的に極べん毛による遊泳能が抑制されることを明らかにしてきた。本年度は、この遺伝子がコードされているPAI領域を強く誘導する条件を用いて、lncRNAcan4の作用メカニズムの詳細な解析に取り組んだ。具体的には、胆汁の二次代謝産物である二次胆汁酸を誘導物質として用いた。まず、lncRNAcan4遺伝子の発現に対する二次胆汁酸添加の影響を調べたところ、胆汁酸添加時と比較して有意な発現の増加が観察された。べん毛遺伝子群の発現は、そのマスターレギュレーターであるFlaK(ClassI)を起源として4つのクラスに分類される。二次胆汁酸添加時では、lncRNAcan4が特定のクラスの遺伝子発現を抑制することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二次胆汁酸を誘導物質として使いlncRNAcan4の発現量を上げることで、より解像度の高い遺伝子発現プロファイルを得ることができた。一方、それにより当初標的因子として想定していた因子が候補から外れ、標的を決定することができなかったため。また、その他のlncRNA候補については研究を進められていないため。
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今後の研究の推進方策 |
lncRNAca4は、プルダウンアッセイなどの生化学的手法を用いて、RNA4が何を標的としてべん毛遺伝子の発現を制御しているのかを明らかにし、その制御の分子機構について検証する。その他のlncRNA候補については計画書通りに非コード性と機能性について検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたプルダウン実験などの実験を次年度に繰り越し、該当実験に必要であった試薬の購入を控えたため。
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