研究実績の概要 |
最近我々は、PGK1プロモーターのTFIID非依存的な転写を、塩基配列を改変することなく(エピジェネティックに)TFIID依存的な転写へとリプログラミングすることに成功した。具体的には、TFIID変異(温度感受性taf1-N568delta変異)とSAGA変異(spt3欠損変異)を一時的に共存させ、その後SAGA変異を除去することにより、PGK1転写をTFIID非依存性モードからTFIID依存性モードへと変換できることを見出した。また本現象にはリプログラミング因子と名付けた未知の相転移産物の生成と維持が重要であることを強く示唆する結果が得られたことから、本研究ではその同定と作用機序の解明を目指している。 今年度は、9種類のサブユニット(Not1, Not2, Not3, Not4, Not5, Caf1, Ccr4, Caf40, Caf130)から構成されるCcr4-Not複合体がリプログラミング因子の本体ではないかと考え、ccr4欠損変異またはcaf1欠損変異の存在下において上記のリプログラミング操作を行い、PGK1プロモーター上でのリプログラングの有無を調べた。その結果、ccr4欠損変異の存在下ではほぼ完全に、またcaf1欠損変異の存在下では部分的にリプログラミング効率が低下することが明らかとなった。以上の結果は、リプログラミング因子の本体がCcr4-Not複合体の相転移産物であることを強く示唆している。また興味深いことに、両変異の導入のみではリプログラミングが起こらなかったことから、Ccr4-Not複合体は相転移により新たな機能を獲得したものと考えられる。
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