研究課題/領域番号 |
23K05650
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 彰良 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10583891)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 立体構造解析 / tRNA断片 / アミノアシルtRNA合成酵素 / DNA/RNAポリメラーゼ / 核酸 / タンパク質 / 鋳型依存伸長反応 / 逆向き重合 |
研究実績の概要 |
自然界で唯一、逆向きの3′-5′方向へ塩基伸長する酵素Thg1は、既存の概念にはない核酸合成手法として注目を浴びている。我々が世界に先駆けてThg1のRNA複合体の構造解析に成功したことで、3′-5′方向ポリメラーゼ反応機構は解明されつつある。しかし、Thg1はタンパク質合成に必須な遺伝子であり遺伝学解析が困難であることから、なぜThg1には3′-5′方向ポリメラーゼ活性が現存するのか、その生物学的意義の解明には至っていない。そこで本研究は、遺伝子重複しかつ機能分化が示唆されている2種類のシロイヌナズナThg1に着目し(Thg1-1およびThg1-2)、近年Thg1の関与が報告されているtRNA断片による遺伝子発現制御に焦点をあて、構造機能解析、RNA解析および遺伝学解析を統合することで、3′-5′方向ポリメラーゼが担うtRNA断片を介した遺伝子発現制御メカニズムと生理機能を解明する。 今年度はThg1-1およびThg1-2を遺伝子欠損したシロイヌナズナを用いて、Thg1-1欠失体のみが温度感受性を示すことを確認し、RNA-seqおよびsmall RNA-seqにより遺伝子発現とtRNA断片を比較すべくサンプリングを行った。現在RNAライブラリーの作成を行っている。また、AlphaFold2を用いたThg1-1およびThg1-2のtRNA複合体モデルの構造比較を行い、Thg1-1でtRNAと相互作用する可能性がある部位がThg1-2では欠失していることを見出した。この部位が3′-5′方向ポリメラーゼ活性に関与する可能性を考え、現在変異体解析の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はThg1-1とThg1-2の3′-5′方向ポリメラーゼ活性を比較すべく、シロイヌナズナの各欠損体が異なる表現型を示すことを確認し、RNAサンプルの調製まで完了している。また、AlphaFold2を用いた構造比較から申請時にはなかった視点からThg1-1とThg1-2の違いを見出すことに成功しており、遺伝学的解析と分子生物学的解析の両方から3′-5′方向ポリメラーゼ活性の比較を進めることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はRNA-seqおよびsmall RNA-seq解析を行い、Thg1-1およびThg1-2の遺伝子発現制御の違いを明らかにしていく。また、Thg1-1およびThg1-2の変異体解析も進め、生化学実験およびシロイヌナズナの相補実験等に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
X線結晶構造解析を予定していたが、AlphaFold2を用いた予測構造から新しい知見が得られたため、生化学実験を先行して実施している。次年度は生化学実験の結果を踏まえてX線結晶構造解析、または変異体の遺伝子発現解析を進める。
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