真核生物の染色体は細胞分裂時に二つの娘細胞へ等しく分配される。体細胞分裂の中期には、染色体と紡錘体はキネトコアを介して接続されており、その両極性の結合により染色体の正確な分配が可能になる。キネトコアは複数の蛋白質因子から構成される超分子複合体であり、染色体のセントロメア近傍に形成される。このキネトコアは染色体に近いインナーキネトコアと紡錘体に近いアウターキネトコアに分類される。CENP-T、CENP-W、CENP-S、CENP-Xはインナーキネトコアに属し、それぞれがヒストンフォールドを持ち、染色体に結合して機能する。CENP-TはCENP-Wと、CENP-SはCENP-Xと相互作用し、それぞれが安定な複合体を形成する。CENP-TWはヘテロ二量体、CENP-SXはヘテロ四量体を形成し、これらが混合することでCENP-TWSX複合体が形成される。生化学的解析により、CENP-TW複合体およびCENP-SX複合体はどちらも配列非依存でDNAと相互作用することが示されており、その様式は異なる。CENP-TW複合体はDNAと強固に結合して凝集体を形成し、CENP-SX複合体は二重鎖DNAの長さに応じてラダー上の複合体を形成する。一方、CENP-TWSX複合体はこれらとは異なる蛋白質DNA複合体を形成するが、その詳細は不明である。そこで、CENP-SX-DNA複合体およびCENP-TWSX-DNA複合体の生化学解析と結晶化を行った。CENP-SX-DNA複合体に関しては、以前の研究を基に、異なる長さや配列のDNAと異なる生物種由来の蛋白質を用いて分解能の向上を目指した。結果として、生物種由来の違いがDNAとの結合能、結晶性、分解能に影響を与えることが明らかになった。
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