研究課題/領域番号 |
23K05685
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
紺谷 圏二 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (30302615)
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研究分担者 |
荒木 信 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (20552904)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 低分子量Gタンパク質 / ARF / ARL / パルミトイル化 / 細胞小器官 |
研究実績の概要 |
ARF/ARLサブファミリーに属するARL15は、いくつかのGWAS解析から糖尿病などの疾患との関連性が示唆されている。また、最近の研究から細胞内マグネシウム濃度調節への関与も示唆されているが、ARL15の細胞内における機能やその制御については良く分かっていない。本年度はARL15の機能解明の手がかりを得る目的で、ARL15の細胞内における存在状態に関する解析を進め、以下の知見を得た。まず、細胞分画の結果、ARL15は主に膜分画に回収されることが明らかとなった。一般的なARFは、N末端のミリストイル化修飾と両親媒性αヘリックス構造が膜局在化に重要であることが知られているが、ARL15のN末端にはミリストイル化修飾されるグリシン残基が存在しない。一方、ARL15のN末端領域には生物種間で良く保存されたシステイン残基が3カ所(ヒトARL15ではCys17, Cys22, Cys23)が存在する。一般にパルミトイル化修飾はタンパク質の膜局在化などに関与することから、パルミトイル化修飾がARL15の膜局在化に関与する可能性について検討した。まず、ARL15のN末端領域のシステイン残基をセリンに置換した変異体で細胞分画を行ったところ、野生型とは異なり、殆どが細胞質画分に回収されることが明らかとなった。また、APEGS assay (acyl-PEGyl exchange gel shift assay)を利用した解析を行ったところ、ヒトARL15のCys17, Cys22, Cys23のシステイン残基がいずれもパルミトイル化修飾を受けていることが示唆された。従って、ARL15は一般的はARFとは異なり、N末端のパルミトイル化修飾を介して膜に局在化すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞内におけるARL15の存在状態については不明な点が多いが、本年度の研究により、ARL15は一般的はARFとは異なり、大部分が膜画分(恐らくゴルジ体や細胞膜)に存在することが明らかとなった。さらにその膜局在化機構として、N末端領域に存在するシステイン残基のパルミトイル化修飾が関与することを見いだした。これらの結果は、膜局在化と機能との関連性を解析する上で有用であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ARL15のパルミトイル化修飾を担う酵素の同定を行う。タンパク質のパルミトイル化修飾は、ZDHHCファミリー分子によって触媒されることが知られており、ヒトでは20種類以上のZDHHC分子が同定されている。そこで各種ZDHHC分子をノックダウンした際のARL15のパルミトイル化修飾の状態を解析する。また候補と考えられるZDHHCについてはノックアウト細胞を作製して解析を進める。また、当研究室で最近構築した蛍光HPLC法を用いて、ARL15の細胞内におけるグアニンヌクレオチド結合状態を明らかにし、細胞内局在やパルミトイル化修飾の状態との関連性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究では、当初の予定よりも遺伝子工学関連および培養細胞関連の実験が少なかったため、予算に差違が生じた。翌年度分として請求した助成金の使用計画としては、本年度の研究で得られた知見を基にして、ARL15のパルミトイル化修飾酵素を明らかにする実験(各種のZDHHC分子のsiRNAによるノックダウンなど)や、パルミトイル化修飾の機能的重要性を検討する実験などを行う予定である。
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