研究課題/領域番号 |
23K05687
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
原 貴史 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (90546722)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Zinc / Hair follicle / Transporter / Zinc signal |
研究実績の概要 |
本研究では、毛包周囲組織における亜鉛恒常性の制御メカニズムと、皮膚毛包の形成との関連を解明することを目的としている。 生体内の亜鉛の恒常性は、亜鉛トランスポーターにより制御されている。申請者らはこれまでに、亜鉛トランスポーターZIP10が毛包周囲に発現すること、またZIP10の失調が皮膚脆弱化や毛包の消失を伴う皮膚の恒常性の破綻に関わることを報告している。しかし、皮膚におけるZIP10発現細胞の役割やその分子メカニズムについては依然として不明な点が多い。そこで本課題では、独自に開発したZIP10発現細胞をGFPで可視化する遺伝子改変マウスを用いて、ZIP10発現細胞の局在や細胞系譜の詳細な解析から、皮膚や毛包の形成に関連する新たな分子メカニズムの解明を目指している。 本年度は、ZIP10発現細胞をGFPで可視化する遺伝子改変マウスについて、GFP陽性毛包幹細胞の遺伝子発現解析と系譜解析のための条件検討を実施した。特に、毛包形成に関わる遺伝子について解析を行い、GFP陽性細胞特異的に発現変動が認められる遺伝子が確認されている。また毛包およびその周囲組織における局在の変化から、ZIP10発現細胞が特定の細胞に分化していることが示唆された。一方で、網羅的な遺伝子発現解析に向けたサンプル回収効率の向上や、毛包オルガノイド培養に向けた検討などについて、実験条件の検討を含めた精査が必要であると考える。引き続き、亜鉛が制御する皮膚や毛包形成の新たな分子メカニズムの解明に向けて検討を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FACSソーティングを利用したZIP10陽性細胞の回収について、ソーティングの実験条件の検討を実施し、遺伝子発現解析に十分な細胞数の回収が可能となっている。一方で、網羅的遺伝子解析に必要な細胞数の回収には、複数匹の遺伝子改変マウスが必要なため、データの再現性と必要なサンプル量について。実験条件の検討が必要な状況である。 ZIP10陽性細胞の分化系譜解析においては、当該遺伝子改変マウスの皮膚細胞懸濁液を用いたFACS解析において、複数の細胞種への分化が示唆される結果が得られている。現在、局在の違いから分化後の細胞種を特定するための実験手法について、組織免疫染色法を中心に検討を計画している。 また、毛包オルガノイド培養系の検討をすすめており、毛包の形成過程における遺伝子変動を解析した後に、ZIP10陽性細胞をオルガノイド培養系に適用し、毛包オルガノイド形成におけるZIP10の寄与を形態観察および遺伝子発現変動より評価する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に基づいて、毛包オルガノイド培養系を用いたZIP10発現細胞のリアルタイム系譜解析系の構築を試みる。毛包オルガノイド培養系は、既報に基づいて、毛包バルジ領域から調製した主に上皮系細胞を含む細胞懸濁液と、毛包下部領域から調製した主に毛母細胞を含む細胞懸濁液の共培養系で検討を試みる。毛包形成の経時変化とGFPあるいはtdTomatoの発現誘導やその局在の変化について、詳細な時空間的解析を行うことで、ZIP10の毛包形成への関与をより詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変マウスの維持飼育にかかる費用について、交配計画の見直しなどにより当初予定よりも費用を抑えて計画を実施することができたため。 また、遺伝子発現解析に用いる細胞サンプルの回収量が、当初予定よりも少なかったため、解析対象とする遺伝子数を調整する必要があり、これに伴い遺伝子解析に使用する試薬の購入金額が少なかったため。 現在、細胞サンプルの回収方法についての条件検討を進めており、当初予定通りに遺伝子解析などを実施できるものと考えており、計画通りの支出が見込まれる。
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