研究課題/領域番号 |
23K05706
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
山崎 泰男 横浜薬科大学, 薬学部, 准教授 (30308621)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 止血 / 血管内皮細胞 / 内腔pH / プロトンポンプ / 膜分離 |
研究実績の概要 |
血小板粘着因子von Willebrand因子(VWF)は、一次止血に不可欠な血漿タンパク質である。VWFは生理的には血管内皮細胞でのみ合成される。血管内皮細胞で合成されたVWFは、分泌顆粒の一種であるWeibel-Palade小体(WPB)に蓄えられ、即時の止血に備えられる。WPBは、長さ0.5-5μmのユニークな葉巻形状のオルガネラであるが、その形成機構はよく分かっていない。研究代表者は、プロトンポンプV-ATPaseがWPBに局在していることを見出した(Yamazaki et. al, eLife 2021)。V-ATPaseは少なくとも13個のサブユニットから構成されるタンパク質複合体で、V0aサブユニットには遺伝子の異なる4つのアイソフォーム(V0a1、V0a2、V0a3、V0a4)が存在する。これらのうちV0a1とV0a2は、血管内皮細胞において異なる集団のWPBに局在する。V0a2はトランスゴルジ網で新たに形成されるWPBに局在するが、細胞辺縁部に局在する成熟型のWPBには全く局在しない。一方、V0a1は細胞辺縁部に局在するWPBにのみ局在する。機能解析の結果、V0a1が存在しないと、トランスゴルジ網で形成されるWPBはトランスゴルジ網から分離できないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、V-ATPaseによるWPB形成メカニズムを明らかにすることを目的としている。初年度にあたる2023年度は、形成過程におけるWPB内腔のpH変化を明らかにするために、pHバイオセンサーの作成を行った。オルガネラ内腔のpHの測定を目的とするため、pH感受性の蛍光タンパク質を用いる方法を検討した。まずWPB内腔へセンサータンパク質を導入するための、分子について検討した。VWFはWPB内腔へパッケージングされる分子であるが、遺伝子サイズが大きく、組換えレンチウイルスの系による導入に不向きであることから、他の分子について可能性を検討した。P-selectinおよびVAMP3はいずれもWPBに局在する膜タンパク質であることが報告されている。これらのタンパク質のWPB内腔側に蛍光タンパク質を融合した組換えタンパク質を血管内皮細胞に導入したところ、いずれもWPBに局在することを共焦点顕微鏡で確認した。pHバイオセンサーがWPB内腔にのみ局在することを確認するために、さらに超解像顕微鏡による局在解析を行った。その結果、P-selectinはWPBにのみ局在が観察されるのに対し、VAMP3は細胞膜にも局在が見られることが判明した。また、野生型のP-selectinに蛍光タンパク質を融合した組換えタンパク質はWPB膜付近に局在が観察されたが、膜結合ドメインを含まないP-selectinに蛍光タンパク質を融合した組換えタンパク質はWPB内腔に一様に存在することが明瞭に観察された。以上の結果から、WPB内腔にのみ局在するpHバイオセンサーが調製できたと結論した。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、WPB内腔にのみ局在するpHバイオセンサーが調製できたので、本バイオセンサーを用いて、血管内皮細胞に形成されるWPBの内腔pHの動的変化を観察する。またV0a1枯渇細胞でも同様の解析を行い、WPBの形成における内腔pH変化の重要性について明らかにする。pH変化の重要性が明らかになったら、内腔pHの変化がV-ATPaseによって生じるか否かについて明らかにする。 V0a1とV0a2はアミノ酸配列上、約70%の相同性を有している。前述の通り、V0a1とV0a2は血管内皮細胞において異なる集団のWPBに局在する。V-ATPaseによるWPB形成メカニズムをさらに明らかにするために、V0a1とV0a2のキメラタンパク質を血管内皮細胞に導入し、局在を決定する領域を同定する。同定ができたら、同領域に相互作用する分子とプロテオームで同定し、さらに詳細なメカニズムを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注した試薬の納品日が会計年度をまたぐことが判明したため、一度当該試薬の発注をキャンセルしたため。
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