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2023 年度 実施状況報告書

哺乳動物ミトコンドリアFoF1ATP合成酵素高次集合体の構造解析

研究課題

研究課題/領域番号 23K05716
研究機関京都大学

研究代表者

慈幸 千真理  京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (70585976)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
キーワードATP合成酵素 / ミトコンドリア / オリゴマー
研究実績の概要

本研究では、クライオ電子顕微鏡による単粒子構造解析とX線結晶構造解析によって原子レベルの構造と高次の形態変化の両面を追求して、哺乳動物FoF1ATP合成酵素のミトコンドリア機能への関わる仕組みの解明を目的とする。
構造生物学においては、解析技術が発達してきているものの、原子レベルでの構造解析のためには、安定で単分散性の高い状態の大量の試料を必要とする。本酵素は、回転を伴い柔軟な構造をとるため非常に不安定で、精製が極めて困難なため、50年以上にわたって精製が実現していなかった。そこで、我々は研究進展の鍵を握る試料調製法に重点を置いて取り組んできた結果、牛心筋由来モノマー、ダイマー、テトラマー、オリゴマーをそれぞれ大量に無傷な状態で精製することに成功した(Jiko et al., JBC, 2024)。 また創薬研究をも視野に入れたクライオ電顕による高分解構造解析を開始し、多くの問題を解決して、サブユニットを解離することなく安定に溶液を交換する条件を確立する方法を開発した。現在、内在性阻害蛋白質IF1が結合した本酵素テトラマー分解能は部分的に3.6Aまで、モノマーは、部分的に2.2Aまで到達した。
またダイマーが列に連なったオリゴマーの形成は哺乳動物ミトコンドリアFoF1ATP合成酵素の特徴である。本酵素の高次集合体は、エネルギー産生効率を上げるためと、ミトコンドリア内膜に存在するmitochondrial contact site (MICOS) 複合体と連動したクリステ先端の湾曲部分の形成に重要で、オリゴマー形成の乱れは、いくつかの病態を引き起こすことが報告されている。近年、MICOS複合体の構成分子であるMIC10と本酵素が結合することがわかってきたため、我々が精製した試料において精製オリゴマーにMIC10が結合した状態を確認できる可能性があり鋭意調査中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

哺乳動物FoF1ATP合成酵素クライオ電顕による構造解析が順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

研究の成功の鍵は、安定で無傷なFoF1ATP合成酵素を大量に精製することであり、申請者は、牛心筋由来モノマー、ダイマー、テトラマー、オリゴマーをそれぞれ大量に複合体を維持したまま精製することに成功した。
今後は、ウシ心筋細胞だけでなく、ヒト培養細胞から本酵素テトラマーを精製する方法の確立と、高分解能構造解析を目指す。
生体膜内で本酵素はオリゴマーを形成する際、機能する最小単位はテトラマーであると考えられているため、テトラマーの構造解析は機能解明や創薬開発のために非常に価値がある。本酵素は健康と疾病に深く関与し、ヒト酵素の高分解能構造解析は、本酵素が引き起こす疾患のメカニズムの解明に直接的に生かされると考えられるからである。
また本研究により明らかにしたい学術的な問いは、なぜ哺乳動物ミトコンドリアFoF1ATP合成酵素はオリゴマーを形成するのかである。精製方法を確立することのできた牛心筋由来のモノマー、テトラマーを使った高分解能構造解析に加えて、中性子溶液散乱法等を用いて動態を解析し、オリゴマー形成メカニズムを解明する。

次年度使用額が生じた理由

実験に必要な試薬等が十分であったため次年度に繰越した。次年度に行う実験に必要な試薬等の購入に使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Large-scale column-free purification of bovine F-ATP synthase.2024

    • 著者名/発表者名
      Chimari Jiko , Yukio Morimoto , Tomitake Tsukihara , Christoph Gerle
    • 雑誌名

      The Journal of biological chemistry

      巻: 300 ページ: 105603

    • DOI

      10.1016/j.jbc.2023.105603

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Inhibition of ATP synthase reverse activity restores energy homeostasis in mitochondrial pathologies.2023

    • 著者名/発表者名
      Acin‐Perez Rebeca,B Cristiane,Fernandez Lucia,Shu Cynthia,Baghdasarian Siyouneh,Zanette Vanessa,Gerle Christoph,Jiko Chimari,Khairallah Ramzi,Khan Shaharyar,Rincon Fernandez David,Shabane Byourak,Erion Karel,Masand Ruchi,Dugar Sundeep,Ghenoiu Cristina,Schreiner George,Stiles Linsey,Liesa Marc,Shirihai Orian S
    • 雑誌名

      The EMBO Journal

      巻: 42 ページ: e111699

    • DOI

      10.15252/embj.2022111699

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Rapid and Highly Stable Membrane Reconstitution by LAiR Enables the Study of Physiological Integral Membrane Protein Functions.2023

    • 著者名/発表者名
      Albert Godoy-Hernandez Amer H Asseri Aiden J Purugganan Chimari Jiko Carol de Ram Holger Lill Martin Pabst Kaoru Mitsuoka Christoph Gerle Dirk Bald Duncan G G McMillan
    • 雑誌名

      ACS central science

      巻: 9 ページ: 494,507

    • DOI

      10.1021/acscentsci.2c01170

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [産業財産権] FoF1-ATP SYNTHASE OLIGOMER2024

    • 発明者名
      慈幸千真理 森本幸生 クリストフゲーレ
    • 権利者名
      慈幸千真理 森本幸生 クリストフゲーレ
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2022/032925
    • 外国

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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