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2023 年度 実施状況報告書

糖輸送体の局在を制御するアレスチンがアミノ酸存在環境においてリン酸化されるしくみ

研究課題

研究課題/領域番号 23K05758
研究機関久留米大学

研究代表者

豊田 雄介  久留米大学, 分子生命科学研究所, 講師 (10587653)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードグルコース枯渇 / 分裂酵母 / 糖輸送体 / アレスチン / TORC2経路 / リン酸化 / ユビキチン化
研究実績の概要

栄養環境の変化に対する真核細胞の応答においてTORC1、TORC2シグナル伝達経路は重要な役割を果たす。分裂酵母細胞が低濃度グルコース環境で増殖するためには六炭糖輸送体Ght5およびTORC2経路が必要であること、そして、TORC2経路がαアレスチンAly3依存的なGht5のユビキチン化とそれに伴う液胞輸送を阻害することを我々は明らかにしてきた。TORC2経路はAly3をリン酸化することが予想され、実際、報告されているリン酸化部位をすべてアラニン置換したAly3(ST18A)を発現する分裂酵母は低濃度グルコース環境では増殖せず、Ght5は液胞局在を示した。このため、低濃度グルコース環境での増殖およびGht5の表面局在に必要なAly3(594aa)のリン酸化部位を探索した。リン酸化部位は4つのクラスターを形成していたので、各クラスター内の3~6カ所のリン酸化部位をアラニン置換した変異Aly3を発現する分裂酵母株を作製した。これらの変異Aly3は発現量は互いに同等であったにもかかわらず、C末端の4残基(S582, S584, S585, T586)をアラニン置換した変異Aly3(Aly3(4th-A)とする)を発現する分裂酵母細胞だけが低濃度グルコース環境での増殖に欠損を示し、Ght5が液胞に観察された。このAly3(4th-A)の4つのアラニン残基を1つずつ元のセリン、スレオニン残基に戻してその機能を解析したところ、582, 584, 585番目のいずれかがセリン残基であることが、低濃度グルコース環境での増殖やGht5の表面局在に十分であることを明らかにした。以上から、低濃度グルコース環境での増殖に必要なAly3のリン酸化部位がC末端に位置することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、アミノ酸や窒素源存在下において糖輸送体の局在を制御する分裂酵母アレスチンがAkt様キナーゼを介してリン酸化されるしくみを解明することである。この目的を達成するために必要な具体的な目標の1つが、低グルコース環境での増殖に必要なAly3のリン酸化部位を特定することである。これまでの実験結果から、低グルコース環境での増殖に必要なAly3のリン酸化部位がC末端に3残基(S582, S584, S585)存在することが明らかとなり、目標を達成できたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

現時点で、TORC2経路(Gad8)によるAly3のリン酸化について、Aly3(S584)のリン酸化がTORC2経路(Tor1)に依存的であることがリン酸化プロテオミクス研究において報告されているが(Mak, EMBO J, 2021)、我々は直接的な実験結果をまだ得ていない。Aly3がTORC2経路(Tor1またはGad8)によりリン酸化されることを証明することは本研究の目的達成に欠かせないため、本研究で見出しているAly3のC末端のリン酸化を特異的に認識するリン酸化抗体を作製し、TORC2経路を欠損する変異体においてこれらのリン酸化を検討する。あるいは、Gad8を分裂酵母から精製し、in vitroで発現させたAly3 C末端へのリン酸化を検討する。
Aly3がTORC2経路により直接リン酸化される可能性を検討した後に、本研究の目的達成のために必要な次の目標である、アミノ酸や窒素源存在下でのみ分裂酵母Aly3がGad8依存的にリン酸化されるために必要な因子を、主にアフィニティー精製と質量分析を用いて探索する。

次年度使用額が生じた理由

本研究では、低濃度グルコース環境での増殖に必要な糖輸送体Ght5の表面局在を調節するαアレスチンAly3のリン酸化を検出することが必要である。本研究を開始してからこれまでに、18か所有るAly3のリン酸化部位のうち、低濃度グルコース環境での増殖に必要なAly3のリン酸化部位(3か所)をC末端に見出すことができた。しかし、このリン酸化を検出するリン酸化抗体の作製は2023年度中には完了しなかったので、次年度使用額が生じた。助成金は今後、このリン酸化を検出するためのリン酸化抗体を作製したり、Aly3やAly3のC末端をリン酸化するキナーゼと相互作用するタンパク質をアフィニティー精製と質量分析で探索・同定するという比較的高額な費用が必要な実験を実施するために使用する計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] In fission yeast, 65 non-essential mitochondrial proteins related to respiration and stress become essential in low-glucose conditions2023

    • 著者名/発表者名
      Mori Ayaka、Uehara Lisa、Toyoda Yusuke、Masuda Fumie、Soejima Saeko、Saitoh Shigeaki、Yanagida Mitsuhiro
    • 雑誌名

      Royal Society Open Science

      巻: 10 ページ: -

    • DOI

      10.1098/rsos.230404

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Phosphorylation of the fission yeast arrestin Aly3 ensures cell-surface localization of the hexose transporter Ght52023

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Toyoda
    • 学会等名
      the 11th Fission Yeast International Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 分裂酵母アレスチンAly3のC末端のリン酸化は六炭糖輸送体Ght5の細胞表面局在を保障する2023

    • 著者名/発表者名
      豊田雄介
    • 学会等名
      第13回TOR研究会
  • [学会発表] 分裂酵母アレスチンAly3のC末端のリン酸化は六炭糖輸送体Ght5の細胞表面局在を保障する2023

    • 著者名/発表者名
      豊田雄介
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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