研究課題/領域番号 |
23K05771
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
杉浦 歩 順天堂大学, 大学院医学研究科, 講師 (70784974)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ミトコンドリア由来小胞 / ミトコンドリア / ペルオキシソーム |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアとペルオキシソーム間を輸送されるMDVs(mitochondrial-derived vesicles,ミトコンドリア由来小胞)は少なくとも2つの経路が存在するが、当該年度は主にペルオキシソームde novo合成に関するMDVsを対象として、形成や放出に関わる制御因子やカーゴの同定を試みた。予備的な網羅的解析により同定されていたMDVs膜タンパク質の結合タンパク質について細胞内局在を確認した。候補因子の蛍光タンパク質融合型発現ベクターを遺伝子導入し、ミトコンドリア・ペルオキシソーム間のMDVs誘導下で免疫蛍光染色を行なったところ、候補因子の一つについてミトコンドリア上で形成された小胞様の構造への局在が確認された。この候補因子は成熟したペルオキシソームや野生型の細胞ではペルオキシソームへの局在は観察されなかった。 ペルオキシソームのde novo合成は関連遺伝子をノックアウトした細胞に当該遺伝子を導入することにより誘導できる。この過程において、ペルオキシソーム前駆小胞が起源となる膜構造から形成・放出されるが、哺乳類ではその一部がMDVsとしてミトコンドリアから放出される。ペルオキシソームde novo合成におけるMDVsの多様性あるいは普遍性を調べるために、脊椎動物ではない生物種の培養細胞を用いて、MDVsの解析モデルを構築した。非脊椎動物由来培養細胞に対してCRISPR/Cas9システムを用いてノックアウト細胞を作製した。この細胞はペルオキシソームを消失していたが、当該遺伝子を導入することによりde novo合成が誘導され、再び成熟ペルオキシソームが形成された。これらの初期過程において、当該遺伝子産物の局在等を解析することによりペルオキシソーム前駆小胞とMDVsの関連を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網羅的解析により得られた候補因子が実際にMDVsに局在することが確認され、これまでの実験系が期待通りに働いていることが確認できた。また、新たに培養を始めた細胞種についても培養、遺伝子導入、遺伝子ノックアウトの実験系が確立され、全体的に概ね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
De novo合成経路に関して予備的な結果より得られた候補因子についての検証実験を引き続き行う。また、もう一つのペルオキシソームへのMDVs経路である既存ペルオキシソームへのMDVsに対しても、膜タンパク質を免疫沈降しプロテオーム解析を行うことにより結合タンパク質の同定を試みる。一部のタンパク質との結合だけでなく、より網羅的なMDVsの特性を決定するためにMDVs自体を生化学的に単離・精製し、プロテオーム解析を行う。同定された候補制御因子に対して遺伝子発現の抑制実験などを行い、MDVsの形成や放出過程における役割の解明を目指す。非脊椎動物培養細胞に関しては、ノックアウトによりペルオキシソームが消失する別の遺伝子を対象としたノックアウト細胞を作製する。当該遺伝子の発現ベクターも作製し、ノックアウト細胞に遺伝子導入することによりde novo合成誘導システムを構築する。同システムを用いて、イメージングによるMDVsの細胞内動態や、免疫沈降等により精製・単離後に網羅的な解析を行い、生化学的な特性を明らかにする。哺乳類細胞で得られた結果と比較解析することにより、MDVsの多様性や普遍性の理解を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部製品の入荷が遅れたため、次年度使用が生じた。
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