研究課題/領域番号 |
23K05778
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
浅岡 美穂 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 研究員 (40370118)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 生殖細胞 / 幹細胞 / 幹細胞ニッチ / ショウジョウバエ / 卵巣 |
研究実績の概要 |
多くの動物において、生殖幹細胞は配偶子の継続的な産生を支えている。発生過程において、生殖幹細胞はその元となる始原生殖細胞の一部から形成されるが、幹細胞となる始原生殖細胞が選択される機構については殆ど解析がなされておらず不明な点が多い。ショウジョウバエ卵巣では、幼虫期の終わりに卵巣前部にある体細胞からニッチシグナル(Dppシグナル)が分泌され、それを受け取る始原生殖細胞(PGCs)のみが生殖幹細胞になることが明らかにされている。しかし、Dppを受け取るPGCsの多くは シグナル産生細胞から離れた位置にあり、それらはDppを受け取らず卵細胞への分化を開始するPGCsと混在しているため、Dppが一部のPGCsのみに運搬される機構は不明である。本申請者は近年、このシグナル産生細胞とPGCsの間にある間質細胞の一部で発現し、その機能が生殖幹細胞の形成に必要な新規膜タンパク質としてPatch paste (Pap) を同定した。本研究は、このPap発現細胞とPapに注目し、その機能を明らかにすることで、Dppを受け取るPGCsが選択される機構の解明を目指して開始した。 今年度は、まずPapタンパク質の発現とDppを受け取るPGCsの位置的関係を細胞レベルで明らかにすることを試みた。これまでにPapタンパク質に対する抗体の作成を幾度と試みたが、それらは感度が低く、細胞レベルでの解析には不十分であった。そこで、免疫組織化学法の条件を検討し、改良を行った。その結果、Papは一部の間質細胞の細胞膜で発現するという結果の再現が得られた。さらに、Pap発現細胞は非常に細い細胞突起をPGCとPGCの間に伸長しており、その細胞突起の表面で強く発現することが明らかになった。これらPapの発現部位と接するPGCがDppを受け取る細胞であるかを、下流遺伝子 リン酸化Madの発現により確認中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リン酸化Mad(P-Mad)に対する抗体も検出感度が低く、シグナルを増感して検出する。しかし、この増感反応の条件が抗Pap抗体の染色条件に合わないため、2つのシグナルを同時に検出するのが非常に難しいことが研究過程で明らかになった。そのため、本年度は抗体染色の反応条件の検討に注力することになり、当初の予定よりやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
P-Mad抗体と抗Pap抗体の二重染色の条件検討を引き続き進める。また、別の方法として、Papタンパク質にGFPタグを入れるノックイン系統の作成をし、Pap-GFP融合タンパク質とP-Madの二重染色により両者の位置関係を調べることも試みる。現在、ノックイン系統を作成中である。これらにより問題を解決できると考えている。 近年、卵巣のsingle cell-RNA Sequence解析により、PGCの周りに複数の間質細胞が存在することが示唆された。今後は、まず、これら細胞のマーカー系統を用いて、Papがいずれの間質細胞で発現するのかを解析する。その上で、それら細胞でのみGal4遺伝子を発現するドライバー系統を用いて、dpp receptorやexocyte-dependent secretory vesiclesに関わる因子の機能を特異的にノックダウンし、Pap発現細胞がトランスサイトーシスによりDppを運ぶ可能性を調べる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
pap遺伝子へGFPタグをノックインする系統を作成をするかどうかを、今年度行った免疫組織化学法によるPapタンパク質の検出方法の改良の結果を見た上で判断したため、外部委託する時期が遅れ、完成が次年度になることになったため、その分の費用を次年度に計上している。
|