iMSC、BM-MSC、Ad-MSCを培養した際の培養上清をプロテオミクス解析し、その結果によりiMSCで高発現する因子としてIGF2を同定した。さらにELISAにて確認し、確かにiMSCの培養上清に3倍以上含まれていることを見出した。CRISPR-OFFシステムによるノックダウンは、特異的に作用するsgRNAをデザインすることが困難であったため、siRNAによるノックダウンを実施した。In vitroでの共培養実験により、iMSCにおいてIGF2をノックダウンすると、Pax7陽性細胞の割合が増加し、MyoD陽性細胞の割合が低下し、筋分化が阻害されることを示した。また共培養後半では免疫染色によるミオシン重鎖陽性面積を定量したところ、IGF2ノックダウンにより有意に陽性面積が低下し、多核の筋管割合も低下したことから、筋細胞の融合を阻害し、筋管の成熟化を阻害することが明らかとなった。IGF2はこれまで骨格筋の発生には重要な分子として報告されたが、生体内で筋分化に関与するという報告はニワトリでの検証程度しかなく、哺乳類では初めての成果と考える。また他にもいくつか候補分子が同定されているため、ELISAでの確認を進めている。 一方BM-MSCで特異的に高発現するマーカーとして線維化関連分子が同定されたが、非常に候補分子が多く、絞り込むためのメタ解析について検証を進めている。またAd-MSCと共通して高発現する因子は比較的少なく、共通の筋再生抑制因子が存在する可能性は少ないと考えられた。
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