研究課題
Hox13変異体成体イモリ(以下、変異体)の尾は異常に伸長し、最大で頭胴長の3倍に至る(野生型は約1倍)。その原因は尾椎数の増加にある。その詳細を解析し、今年度、以下の結果を得た。1. 野生型、変異体いずれにおいても尾端に軟骨棒があり、そこから尾椎が追加される。しかし、変異体の軟骨棒は野生型のものに比べ、太くて長く、尾椎の追加スピードは20倍程度速い。2. 野生型の尾再生時には1と同様に軟骨棒から高速に尾椎が追加されるが、そのスピードは変異体とほぼ等しい。以上の結果から尾長率維持と尾再生のしくみとして次の仮説を立てた。Hox13は尾端において軟骨棒の伸長とそこからの尾椎形成の速度がゆるやかになるように調節をし、尾長比を維持する。尾端の切断によりHox13の発現が失われ、軟骨棒の伸長と尾椎形成が高速に進行し、尾再生が行われる。尾再生中にHox13の発現が復活し、尾椎追加が適切な時期(失われた尾椎数に達する時期)に終了する。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度の成果は変異体の尾長伸長異常の仕組みの解明に大きく貢献したこと、尾再生との相関が強く示されたことによる。
Hox13の尾長比維持および尾再生との相関をより深く解析するために、以下を行う。1. 野生型、変異体それぞれの尾端および野生型尾再生芽についてRNAseqを行なっていて、その解析を行う。すでに初期的成果として変異体の尾端と野生型尾再生芽の両者で野生型尾端に比べ共通して増減する遺伝子が多数見つかり、この二つのトランスクリプトームが非常に似ていることが判明している。これを詳細に解析する。2. 野生型、変異体それぞれの尾端および野生型尾再生芽について組織学的解析を行い、1の結果と合わせ、どのような細胞がどのように軟骨棒の伸長に関わるかを明らかにする。3. 野生型の尾切断後にHox13を発現させ、尾再生が阻害されるか否かを検証し、Hox13の一過的な消失が尾再生を引き起こすという仮説を検証する。
当初、RNAseq実験にかかる費用が大きいと予算計画をしていたが、基礎生物学研究所との共同利用研究により、低額で実験することができた。このため、次年度使用額が発生した。今後、このRNAseq実験の結果を検証、発展させるために不可欠なqPCRやISH等の実験や本研究課題において重要であるHox13遺伝子強制発現実験など高額な実験を遂行する必要がある。このため、今回の予算と翌年度分の予算とを合わせ、有効に活用していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Endocrine Journal
巻: 71 ページ: 181~191
10.1507/endocrj.EJ23-0207
Dev. Growth Differ.
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https://www.med.tottori-u.ac.jp/introduction/lifesciences/about/3319/3335/23806.html