研究課題/領域番号 |
23K05784
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田川 訓史 広島大学, 瀬戸内CN国際共同研究センター, 准教授 (00403577)
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研究分担者 |
有本 飛鳥 広島大学, 瀬戸内CN国際共同研究センター, 助教 (00794603)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 口と肛門 / シングルセル解析 / ギボシムシ / Brachyury |
研究実績の概要 |
地球上に現存する動物のほとんどは、左右相称動物に分類され、それらは慣例的に発生学的な特徴に基づいて、さらに新口動物と旧口動物に分類される。新口動物では、初期発生過程の原口から肛門が発生するのに対し、旧口動物では、原口から口が発生する。このように発生様式が異なるにもかかわらず、Brachyury 遺伝子は、どちらの動物群でも同様に、口と肛門で発現が見られる。本研究の目的は、半索動物門ギボシムシ綱に属するヒメギボシムシ Ptychodera flava の胚を用いて、Brachyury 遺伝子を発現する細胞のシングルセルトランスクリプトーム解析を行い、口で Brachyury 遺伝子を発現する細胞と、肛門で Brachyury 遺伝子を発現する細胞の遺伝子プロファイルを特定し、これら二つの細胞集団間での遺伝子発現プロファイルを比較解析し、細胞集団間の等質性を評価することである。そして、左右相称動物と総称される新口動物ならびに旧口動物の異なる発生様式の進化を明らかにする糸口としたい。今年度は、細胞解離実験に必要な試薬等を準備し、沖縄での産卵シーズンと考えられる時期の11月の終わりに、ヒメギボシムシ採集のため、沖縄へ出張して生殖翼が発達したギボシムシ成体を採集して、産卵・放精を試みたが、残念ながら発生した胚を得ることができず、初期胚でのシングルセル解離実験を実施することができなかった。しかしながら、並行して取り組んだ成体におけるシングルセル解析にて、Brachyury 遺伝子を発現する細胞が、尾の先端部分にあることを明らかにし、論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外出張などの他の業務と、採集に適した潮の日時とをうまく予定調整ができなかったため、採集日が限定された結果として今回サンプリングに費やす日数が、一週間程度と少なかったことが第一の原因である。また、今年度の採集ならびに産卵放精実験では多くの個体は既に野外で産卵を終えていたことから、沖縄でのヒメギボシムシの産卵シーズンが、当初考えていた11月末よりも少し早い可能性がでてきた。一方で成体の様々な組織を用いたシングルセル解析の実験手法を確立しつつあり、これまでの知見では予想されていなかった成体の肛門で本研究の解析対象であるBrachyury 遺伝子が初期胚と同様に発現していることを明らかにするなど、本研究の達成に向けた新たなバックアッププランも構築しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果を踏まえ、気候により若干のずれはあるかと考えられるが、次年度以降は、もう少し時期を前にずらしてのサンプリングを試みる予定である。また、今後はアクセスしやすい沖縄だけでなく、台湾やハワイでのサンプリングを視野に入れ、初期胚の入手機会を増やした上で、シングルセル解析用の細胞調製を試みる。台湾での研究活動では、現地の共同研究者と調整して、親個体の採集ならびに細胞調製実験等の円滑な実施を図る。なお、細胞調製の条件検討に関しては、細胞間の結合が初期胚よりも強固と考えられる成体を用いた実験において、本研究の実験目的にも適合するであろう条件が示されつつある。初期胚が用意でき次第、当該条件を適用し、シングルセル解析用のライブラリ調製の成否を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定通りにサンプリングが進まなかったため,シングルセル解析のための条件設定やその後のトランスクリプトーム解析を実施できず,それらの解析費用を次年度へ持ち越すことになった。サンプリングのための旅費や,サンプリング後のトランスクリプトーム解析などの費用として,次年度使用計画を進めている。
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