研究課題/領域番号 |
23K05809
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝征 中部大学, 応用生物学部, 教授 (50535797)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | AT-AC型イントロン / DROL1 / サプレッサースクリーニング |
研究実績の概要 |
シロイヌナズナのdrol1変異株は当初油脂を蓄積する遺伝的なしくみが異常になった変異株として単離されたが、その後の研究でスプライシングに異常があることが明らかとなった。全ての真核生物はイントロンを持っており、その末端の塩基配列はGT-AGであるものがほとんどである。しかし、drol1変異株ではこれらのスプライシングには異常がなく、ごくわずかに存在する末端がAT-ACであるイントロンのスプライシングだけが抑制されていた。イントロン末端の塩基配列に応じた固有のスプライシング因子の発見に基づき、そのしくみを解明することが本研究の目的である。 DROL1がどのようにAT-AC型イントロンのスプライシングに関わるのかを明らかにするために、drol1変異株のサプレッサーのスクリーニングを行った。申請時では3個のサプレッサーの原因遺伝子の候補がわかっていたが、その後さらに4個のサプレッサーの候補遺伝子がわかった。2023年度はこれら7個のサプレッサーの原因遺伝子を同定する研究を中心に行い、いずれも成功した。 サプレッサー中でAT-AC型イントロンのスプライシングが回復しているかどうかを調べたところ、回復の程度は変異や遺伝子によって様々であることがわかった。ほとんど野生株と同様のレベルまで回復しているものがある一方、drol1とあまり違わないものもあった。本研究以前にはイントロンを残したmRNAがあることで、機能的なタンパク質が減少することがdrol1の表現型の原因であると推測していた。しかし、様々な研究の結果、AT-ACイントロンが残留すること自体が植物に何らかの応答を引き起こしているのではないかとの着想に至った。AT-AC型イントロンの残留が完全になくならなくてもdrol1の表現型が回復したことは、この仮説を支持していると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画申請時には3個であったサプレッサーが7個に増え、いずれの原因遺伝子も明らかにした。7個の変異は4個の遺伝子の変異であることが明らかとなり、いずれもU5 snRNPのタンパク質因子であった。 サプレッサーがどのようにしてAT-AC型イントロンのスプライシングを回復させているのかを調べるために、末端がGT-AGとAT-ACのどちらでもスプライシングできるようなコンストラクトを作成し、野生株、drol1変異株、サプレッサーで調べた。その結果サプレッサーではdrol1変異株と同様にAT-AC型スプライシングが起きないことがわかった。 上記の結果を踏まえ、現在論文原稿を作成している。2024年夏には投稿でき、研究計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
予定どおり論文を書き、投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
無理に残額を0円とすることをしなかったため、次年度使用額が生じた。残額は予算の1%未満であるため、適切に使用した。 次年度に繰り越し、消耗品の購入にあてる。
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