研究課題/領域番号 |
23K05814
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
西川 周一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10252222)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 有性生殖 / 核融合 / 核膜タンパク質 / 細胞骨格系 / ゼニゴケ |
研究実績の概要 |
細胞核の融合は有性生殖における必須の過程のひとつである。われわれが、出芽酵母とシロイヌナズナを用いた解析で同定した、有性生殖過程の核膜融合に必要なタンパク質のホモログは基部陸上植物のゼニゴケにも存在する。本研究では、これらの機能解析を通じて、精子を用いた受精を行う生物における有性生殖過程の核融合機構の解明を目指している。 本年度はまず、核膜融合タンパク質ホモログMpGEX1の機能解析をおこなった。mCitrine-MpGEX1融合タンパク質を発現する雌株の解析から、MpGEX1は卵細胞の成熟過程で核膜上に集積することを示唆する結果を得た。また、蛍光タンパク質を用いて卵細胞の核膜を可視化したMpGEX1欠損変異雌株(Mpgex1株)を作製し、これを用いた試験管内受精実験によって、MpGEX1が受精卵における雄性前核形成過程で機能することを示唆する結果を得た。 本年度はまた、核内膜のSUNタンパク質であるMpSUNの受精時の核融合への関与を検討するため、MpSUNの優性欠損変異体(MpSUNDN)を卵細胞特異的に発現する雌株を作製した。野生株の精子を用いた掛けあわせ実験の結果、作製した株は有性生殖過程に欠損を示すことが明らかとなった。この結果は、MpSUNが有性生殖過程に関与していることが示唆された。 本研究では、ゼニゴケ受精卵を用いたライブイメージング解析系の確立も進めている。これまでに、蛍光タンパク質を用いて卵細胞の核膜、微小管、および、アクチンフィラメントを可視化する雌株を構築した。現在、作製した株を用いて、共焦点顕微鏡と二光子顕微鏡によるライブイメージング解析の実験系の確立を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼニゴケ有性生殖におけるMpGEX1とMpSUNの機能解析については、解析のための変異株や形質転換植物の構築が予定通り進んでいる。また、両者とも受精過程に関与すること、特にMpGEX1が雄性前核形成過程に関与することが示されるなどの成果も得られている。また、受精過程のライブイメージング解析系の実験条件の検討も予定通り進んでいることから、当初の計画どおり研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ライブイメージング解析の実験系が確立したところで、雄性前核形成過程におけるMpGEX1や細胞骨格系の役割の解析を行う。また、受精におけるMpSUNの役割の解析では、MpSUNDNの発現によって精子核の脱凝縮から雄性前核形成、核融合のどのステップが阻害されるかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:2,755円の次年度使用額が生じた。購入の計画をしていた物品の価格がこの金額よりも大きかったため、次年度の予算と合わせて購入を行ったためである。 使用計画:当該物品は4月に入った時点で購入し、次年度使用額は既に使用済である。
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