研究課題/領域番号 |
23K05815
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
武内 秀憲 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任助教 (10710254)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 分泌ペプチド / 花粉管ガイダンス / 助細胞 / 周期 |
研究実績の概要 |
被子植物の受精は、雄の花粉管細胞が先端成長によって伸長し、雌しべの奥深くにある胚珠の助細胞までガイドされることで行われる。胚珠の助細胞から分泌される誘引ペプチドLUREsが花粉管の伸長方向の調節 (誘引) を直接担うことがこれまでに明らかとなっている。しかしながら、「助細胞は離れた位置の花粉管へとどのように位置情報を伝え、伸長方向の変化を引き起こすのか?」という根本的な問いに対して、原理を説明できるモデルは未だに提唱されていない。本研究では、我々が発見した「誘引ペプチドLURE1の分泌振動現象」に注目して、このダイナミクスの制御機構と役割を解析する。これにより、花粉管の“リモートコントロール”が実現する原理の解明を目指した。 本年度は、助細胞からのLURE1分泌のダイナミクスに関わる分子経路を見出すために、LURE1を蛍光可視化した株(LURE1-Citrine)および液体培地に胚珠を取りだして培養する系(in vitro)を用いて、LURE1分泌の極性や周期を蛍光ライブイメージングにより観察した。いくつかの阻害剤の影響を調べたところ、活性酸素種(ROS)の経路がLURE1分泌の極性に関与することが示唆された。一方で、分泌極性に影響が現れる条件や細胞の活性が低下する条件においても、振動の周期は大きく変化することはなく、頑健な仕組みによって成り立っていることが示唆された。 これまでに我々が確立したex vivo観察法(雌しべの部分的な解剖により生体内での花粉管と分子の挙動を蛍光ライブイメージングする方法)を利用し、花粉管の誘引応答を定量的に調べるために、蛍光マーカー遺伝子を各種変異体や過剰発現体への導入を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液体培地条件(in vitro)と生体に近い条件(ex vivo)の両方でLURE1-Citrineの蛍光ライブイメージングを安定して行えるようになった。LURE1分泌ダイナミクスへの関与が期待される変異体の収集やドミナントネガティブ型因子の発現株作出も進んだため、次年度の解析を計画通り実施できる。
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今後の研究の推進方策 |
LURE1分泌への関与が示唆された活性酸素種(ROS)の経路に着目して、各種レドックス分子や派生分子をより詳細に解析することで、助細胞からのLURE1分泌に特異的な制御機構に迫る。また、LURE1を含む助細胞からの分泌がセルフモニタリングされている可能性を調べるため、関与が期待される他の分泌ペプチドや細胞膜受容体の変異体を作出した。次年度、これらの株を用いて、in vitro条件におけるLURE1ダイナミクスおよびex vivo条件における花粉管誘引の様子を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析を担当していた研究員が年度途中で異動したため、実験・解析の予定を一部次年度に集約することを見込んで予算を繰り越した。
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