研究課題/領域番号 |
23K05841
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
横井 佐織 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (10772048)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 個性 / セロトニン |
研究実績の概要 |
本年度は、臆病系統よりも大胆系統で発現量が少ない遺伝子の一つであるセロトニンの生合成に関与するトリプトファンヒドロキシラーゼ、tphに着目した。ELISAを用いて全脳におけるセロトニンの量を定量したところ、実験系統であるdrR系統と臆病系統と比較して、大胆系統ではセロトニンの量が有意に少なかった。 また、drR系統バックグラウンドでtphをKOしたメダカを取り寄せ、驚愕応答実験を実施したところ、当該個体は野生型のメダカよりも大胆な傾向にあることを発見した。これは、セロトニンが大胆さを規定する要素の一つであることを示唆している。一方で、セロトニン再取り込み阻害薬であるフルオキセチンを大胆系統に投与しても、臆病化は確認されなかった。この結果は発達段階でのセロトニン神経回路構築の段階で臆病系統と大胆系統とに違いが生じており、一度神経回路が構築されたあとにセロトニンの量を増やしても行動は変化しない、ということを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メダカの大胆さの個性を制御する遺伝子の一つとして、tphが関与している可能性が高い、ということを明らかにすることができた。tphの発現量の違いのみで大胆さを説明できる、というわけではないが、大胆さを規定する分子神経基盤の解明のために、必要因子の一つを同定できたのは大きな一歩であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
tphのKO個体は実験系統であるdrRバックグラウンドのものを今回利用したため、臆病系統のバックグラウンドでtph遺伝子をノックアウトし、こちらでも大胆化が確認されるかを検証する。また、今回セロトニン神経系の回路に大胆系統と臆病系統とで差が存在しそうである、という結果が得られたため、抗セロトニン抗体を用いて大胆系統と臆病系統の脳を染色し、その違いについて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子変異体メダカを作製しているが、卵を産まないなどのトラブルがあり、ジェノタイピングに使用予定だった額が余っている。個体が増え次第、ジェノタイピング外注費用として利用する。 また、現在共同研究先にメダカtph2抗体の作製を依頼しており、完成を待っている状況である。完成後にはその作製料金を次年度使用金から支払う予定である。
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