研究課題/領域番号 |
23K05854
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研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
安藤 規泰 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (70436591)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 昆虫 / 羽ばたき飛行 / 接着機構 / チョウ / 高速度撮影 / 鱗粉 |
研究実績の概要 |
今年度は前翅と後翅を機械的に接続するリンク部位の解析を行った。対象とするアサギマダラのリンク部位は前翅後縁裏面および後翅前縁表面に存在するが,顕微鏡観察により特徴的なサメの歯状の鱗粉構造を確認した。このサメの歯状の鱗粉構造と通常の円形の鱗粉構造の境界は翅脈とは限らず,リンク部位のみに存在したことから,面ファスナーのような接着機構と考えられる。 次に,このサメの歯状の鱗粉構造の前翅・後翅の結合に果たす機械的な役割を明らかにするために,鱗粉の有無と両翅の結合強度を評価した。チョウ目の前翅と後翅は,ハチ目のように翅の外縁で明確なジッパー構造で結合しているのではなく,後翅の上に前翅が重なるスタイルであり,前述の鱗粉構造のほかには明確な結合機構は見当たらない。したがって,このサメの歯状の鱗粉構造が,リンク部位における両翅の摩擦を生み出していると予想した。実験では,後翅をロードセルに固定し,実際の羽ばたきと同様に後翅上面から前翅を下ろし,両翅が接触した状態から離れる際に加わる最大の力を両翅の結合解離力と定義し計測した。実験の結果,リンク部位に存在する鱗粉を除去すると結合解離力が有意に低下することが示され,鱗粉が前後翅の結合に関わっていることが示唆された。次年度からは鱗粉除去後の前後翅の運動の変化を自由飛行で解析する予定である。 その他,自由飛行での実験の準備として筋電位計測手法と解析方法の検討,三次元の翅運動を高速度撮影データから計算するためのプログラム作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前後翅の結合強度を評価するための力学計測系を検討し,鱗粉の有無が結合解離力に影響を与えることが示唆された。力学計測は初年度の重要な研究項目であり,計測方法が課題であったが,ロードセルとレーザー変位計を組み合わせることで,手動操作で精度を高めることができた。この成果により次年度以降の自由飛行計測をスタートすることができるため,研究は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果に基づき,まず自由飛行における前後翅運動を,リンク部位の鱗粉の有無で解析する。より精密な翅運動を定量化するため,高速度カメラを追加し,死角のない撮影を目指す。また知見の乏しい後翅の飛翔筋活動を明らかにするために,昆虫を固定した拘束飛行での計測から始める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の研究室移転が年度途中に決まり,スペースを要する実験項目である運動解析を中心に機器の新規購入を伴う実験計画を次年度に移す必要が生じたため。これらの項目は初年度に実験準備を進めるものであるため,研究の遂行に大きな影響はない。
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