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2023 年度 実施状況報告書

転写依存性DNA複製開始制御機構におけるグアニン四重鎖(G4)形成の役割

研究課題

研究課題/領域番号 23K05872
研究機関公益財団法人東京都医学総合研究所

研究代表者

田中 卓  公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 主席研究員 (80425686)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードSDR / RNA-DNA hybrid / G4 / transcription / DNA replication / PriA / RecA / RNaseHI
研究実績の概要

SDRはerror-proneな複製系である可能性がある。変異率はrpsL遺伝子の変異によるストレプトマイシン(Sm)耐性株の検出により測定可能であり、SDR生育株にこの系を導入することで測定系を確立した。その結果、Sm耐性菌の出現は、SDRにより上昇するものの大半は内在性rpsL128との組換えによるため、allele specific primerによるPCRによってこれを排除、rpsL128 allele以外の変異のみを計測する実験系を確立した。
SDRに必須の因子、PriAとRecAが相互作用することを見出しているが、その結合動態は不明である。相互作用に重要とされるC端を欠失したRecAとの相互作用を見ると、影響しないことが分かった。PriAとRecAの結合にはRecA C端は関与しないらしい。
SDRのorigin候補として同定したoriT1に含まれる内在性G4形成配列(boxC1)直前にT7 promoterを挿入して転写を誘導するとoriC/DnaA非依存性複製を活性化できる。転写の向きを検証するため、逆鎖の転写、あるいは、複製可能な転写ブロックの逆位挿入などを調べたが、いずれもSDR活性化機能を検出できなかった。方向に優位性があるらしい。
また、その他のboxC近傍へのT7 promoter挿入株を作製したが、これらの転写を誘導しても、今のところSDR活性化株を得ることができない。
SDR開始に転写に伴うG4形成が重要と想定している。今までG4の検出ができていなかったが、今回G4Pペプチド抗体を使用しChIP-seqを行ったところ有意なピークが得られ、一部はRNA-DNA hybridと一致していることが分かった。大部分はtRNA遺伝子に見られるが、これに依存しないピークも見出している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

SDRの生理的意義確定のために変異率を測定可能にするrpsL挿入株を構築したが、DNA断片が入りにくい部位があり、構築に予想外の時間がかかった。SDR人口的誘導株は今のところ一株しか得られておらず、想定外の遺伝子変異やreversionによって増殖する可能性も排除できないため、新たに10箇所のboxC近傍にT7 promoterを挿入した株、あるいは転写の方向性を変えた株を作製し、SDR機能解析を行うのに時間を要した。
G4の検出は、当初G4検出プローブとしてBG4を使用しChIP-seqを行ったが、有意なピークが得られず、また、G4特異性については議論があるところであったため、G4Pによる検出に切り替えた。ChIP-seqについては先端ゲノム支援に採択されたのでそちらに依頼しており、サンプル調製から結果が得られるまでにある程度時間がかかるため、遅延の原因となった。
株作製は予想外の困難に直面することもあり、また、意味のある形質が得られないときはさらなる変異株を確立する必要もあるため、全体としてはやや遅れていると考えているが、ある程度の数が揃ったので、今後は測定や観測が進むものと予想しており、挽回可能であると考える。

今後の研究の推進方策

今後は確立した株による変異率の測定を行う。相同組換えによるrpsL128変換株を排除する系によって突然変異株のみを解析することで変異率とその内訳を確定する。人口的複製誘導株は次世代シーケンス技術により全ゲノム配列決定を行って、この複製開始に必須のエレメントを同定する。同定されたエレメントをその他の株に導入することで普遍性を確かめ、可能であれば、その他の生物種においても同様の現象を誘導できないかを検討する予定である。ChIP-seqやRNA-seqの解析は受託業者を利用して必要なデータを取得する。
同定したoriT1内に存在する機能未知遺伝子ycjDについて、精製タンパク質による各種生化学特性を決定する。DNAあるいはRNA-DNA hybridやG4への結合活性や、SDR機能への関与を決定し、SDR開始機構の分子動態を確立したい。
G4PのChIP-seqにより細胞内G4構造の検出が可能となったので、RNA-DNA hybridの位置との相関を解析する。また、BrdU-ChIPによりDNA合成位置との相関も検討したいが、現在の解像度では開始点を同定できないことが分かったので、RNA-DNA変換点の検出や、新生鎖を単離することで開始点を特定できないか検討する予定である。これらの結果から転写に依存してG4が形成され、これがSDR開始に必須の役割を果たすモデルを確立したい。
この複製モデルは、プラスミド上では最小複製単位として確立しており、今後は更に詳細なin vitro解析と、真核細胞で同様な複製を検出するためのベクター構築を検討する予定である。

次年度使用額が生じた理由

株作製に時間がかかったため、予定していた次世代シーケンスの外注および、タンパク質精製とその生化学的解析を実施できておらず、これらにかかる費用が執行されていない。また、NanoPoreを使用したゲノム解析も予定しているが、まだパイロット実験を実行する段階に達しておらず未執行であることが主な理由である。
これから行うChIP-seqについては前段階としてChIP-qPCRを行い、RNA-DNA hybrid、G4、および、BrdUの位置を検出する予定であり、このqPCR用試薬を購入する。その上で、上記の次世代シーケンス解析の外注、タンパク質精製、生化学的機能解析を順次行う予定であり、これらに必要な経費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] The transcription-driven multi-replicon mode of the Escherichia coli chromosomal replication and roles of G4 structure.2023

    • 著者名/発表者名
      田中 卓、鷺 朋子、深津 理乃、覺正 直子、正井 久雄
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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