研究課題
本研究では、進化の過程で起きた変化、つまり、置換、挿入、欠失の観点から進化モデルを考え、変化の多様性を捉えることができる情報論的尺度を配列間の差異を推定するのに取り入れることで、あらゆる生物研究において礎となる進化の過程に沿った系統樹を作成する手法を確立すること目的とする。考えられる樹形の数は、系統推定の対象となる分子配列数の増加に伴い爆発的に増加する。樹形の情報量を計算するにあたり、膨大に要する計算時間をいかに削減しながら極力情報量を最大とする樹形および進化過程に沿った樹形を選びだすのかが本研究での重要ポイントである。令和5年度は、数多くの樹形の中から最良な樹形を選択する手法の確立に向けて、試行錯誤を重ねながら時間を費やした。アライメント済みの n 配列(n≧3)を全2分木の葉ノードに割り当て、内部ノードに対応する祖先配列の推定を行った。なお、詳細は省略するが祖先配列の推定には、計算時間削減のための工夫を行った。また、親ノード配列が与えられたときの子ノード配列間の相関を情報尺度を使って求め、樹形全体の情報量を算出できるようにした。これにより現在は、配列のサイトごとではなく配列全体として変化を捉える樹形を選択できる段階に至っている。今後は、様々な分子配列データを用いて実験を行うことで生じるであろう課題を一つずつ解決していき、最終的に進化の過程に沿った系統樹を作成する手法の確立を目指す。
2: おおむね順調に進展している
令和5年度は、配列変化の多様性を捉えることができる数理を用いて、進化の過程に沿った系統樹を作成するための理論の構築に時間を充てた。これは当初の予定通りである。よって、おおむね順調に進展していると判断した。
今後は、置換、挿入、欠失といった事象が発生する頻度や配列長や配列数が大きく異なる様々な分子配列データを用いて、理論をもとにした実践プログラムを動かしたときの課題を洗い出し、その解決方法探りながら研究を推進していく。
研究室で公開しているWebアプリケーションの分子系統解析ツールP*R*O*Pの運用にあたり、AWS(Amazon Web Services)が提供しているサーバーの利用、サーバーのモニタリングとダウン時の復旧、最新セキュリティーパッチの適用にかかる保守を株式会社AndGoへ依頼している。その費用に科研費を使用させていただいているが、2023年2月分と3月分の費用の請求が2024年4月であったため、次年度使用額が生じた理由はその分である。2023年2月分と3月分の費用の支払いは次年度に持ち越して使用する。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Cancer Diagn Progn.
巻: 3(4) ページ: 439-448
10.21873/cdp.10237.