研究課題/領域番号 |
23K05897
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
田中 法生 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10311143)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 海草 / 岩礁 / 地理的遺伝構造 / 気候変動 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本近海に分布する岩礁性海草のスガモおよびエビアマモについて、DNAシーケンスおよびMIG-seqによるSNPを用いて、地理的遺伝構造を解明し、種内に存在すると予測される遺伝的グループの生育環境・環境応答性を明らかにし、将来的な気候変動予測に沿って時空間的な分布推定を行う。これらの結果から得られた分布推定と遺伝的多様性、分散特性および浸透性交雑範囲を総合的に解析し、岩礁性海草全種の将来の分布変動を予測し、保全指針を提示することを目的としている。 2023年度は、1)分布調査、2)サンプリング、3)生育環境情報の集積、4)DNA解析を実施した。1)分布調査においては、文献から129、現地調査から62 標本情報(s-net及び国立科学博物館統合DB)から281、合計472点の分布情報を、文献から91地点の付随する水深情報を得た。2)サンプリングにおいては、エビアマモについて8府県(宮城県、茨城県、千葉県、石川県、福井県、京都府、鳥取県、島根県)20地点から約250サンプル、スガモについて4道県(北海道、青森県、茨城県、千葉県)16地点から約200サンプル、ヒメスガモについて千葉県の1地点10サンプルを採集した。各地点について、証拠標本を作成し、すべてのサンプルについてDNA抽出用のシリカゲル乾燥葉を採取した。生殖器官が存在したサンプルについては雌雄性を確認し記録した。3)生育環境情報においては、各調査地点において水深を記録した。4)採集サンプルのうち、約350サンプルについてはDNAを抽出した。2種4地点12サンプルを用いて試行的MIG-seq解析実験を行い、検出は問題なく実施でき、2種間の変異も十分にあることがわかった。 2024年度は、採集サンプルの少ない地域(道北、道南、三陸、東海、北九州)でのサンプリングを実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンプリングについては、当初の想定値(30地点600サンプル)にほぼ到達しており(36地点450サンプル)予定以上に順調に進行している。一方で、国外のサンプル(韓国、一部の他種について北アメリア)については、いずれもカウンターパートとの連絡を済んでいるものの、実際のサンプリングは未実施である。総合的に、(2)のおおむね順調に進展していると、評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、採集サンプルの少ない地域(道北、道南、三陸、東海、北九州)でのサンプリングを実施する予定である。また、国外でのサンプリングについて、すでに連絡済みのカウンターパートとより緊密に連絡をして、実施できるように進める予定である。DNA解析については、年度の後半から開始をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者自らの実験作業などが可能だったため、人件費を削減できたこと、また、DNA抽出についても安価な方法で実施できたこと、協力者による現地採集を複数箇所について行えたことなどにより、旅費、人件費、物品費いずれも節約することができたため。2024年度は、遠距離の採集地が残っていることや、人件費が必要になること、DNA実験が本格的に開始されることなどにより、当初予定に戻っていくと考えている。
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