研究課題/領域番号 |
23K05933
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
中村 浩平 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40456538)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | メタン発酵 / 嫌気的原油分解 / 種間電子伝達 |
研究実績の概要 |
①DIETの検証: DIETには細胞間で電子授受できるタンパク質や細胞構造体の関与が知られている。これらを網羅的に調査するためにメタゲノム(以下MG),メタトランスクリプトーム(以下MT)解析を行った。 【培養】MT解析用に静岡の産油地由来の軽油メタン発酵系を用い,アルカン分解過程のRNA・DNAを抽出し,MT・MG解析を行った。 【MG解析】MT解析のマッピングに使用するために,MiSeqとMinIONを使ってメタゲノムを取得し,良質なMAGを取得した。MAGには,アルカン分解菌(Smithella属細菌)とメタン生成アーキア(Methanoregula属,Methanobacterium属,Methanothrix属アーキア)のほぼ完全なMAGが得られた。 【MT解析】HiSeqを用いてcDNAリードを取得し,アルカン分解細菌やメタン生成アーキアのMAGにマッピングを行った。アルカン分解,メタン生成に関わる遺伝子が強発現していた。また,アルカン分解菌にe-Piliと考えらえる遺伝子の発現も確認された。 ②エネルギーネットワークの解明: 【Methanothrix属アーキアの分離】軽油メタン発酵系からMethanothrix属アーキアの分離を試みた。酢酸を唯一のエネルギー,炭素源にした集積培養を行い,その集積培養系から嫌気培養試験管中のゲランガム培地にコロニーを形成させた。コロニーを新しいゲランガム培地に再植菌し,純化を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に培養系が生育し,十分な細胞量が得られたことから,計画通りに1回目のMG,MT解析が可能となった。得られたMG,MTの結果の解析を進める。また,Methanothrix属アーキアのコロニー形成に成功したことは特筆できる。Methanothrix属アーキアは固体培地で生育(コロニーを形成)しにくいことが知られており,理由は不明であるが,嫌気培養チューブ内のゲランガム培地にコロニーが形成された。
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今後の研究の推進方策 |
①DIETの検証: DIETには細胞間で電子授受できるタンパク質や細胞構造体の関与が知られている。これらを網羅的に調査するためにメタゲノム(以下MG),メタトランスクリプトーム(以下MT)解析を行う。 【培養】MT解析用RNAを確保するために充分な容量の培養系を準備する。十分な細胞量が取得できのであれば,RNA・DNAを抽出し,MT・MG解析に用いる。 ②エネルギーネットワークの解明: MT解析にて強発現する遺伝子群の詳細な解析等を行う。 【解析】R5年度に行ったMG,MT解析を継続する。アルカン分解細菌のAcetyl-CoA経路,Methanothrix属アーキアのメタン生成酵素遺伝子群,また,水素資化性メタン生成アーキア(Methanoregula属,Methanobacterium属アーキア)のメタン生成酵素遺伝子群に加え,それらにMAGにarchaellumが存在するのであれば,その遺伝子発現を解析し,DIET反応との関連について調査する。 【Methanothrix属アーキアの分離】R5年度に得られたMethanothrix属アーキア培養系から更に分離を行い,純化を行う。純化された菌体からゲノムDNAを抽出し,全ゲノム配列の決定を行う。 【水素資化性メタン生成アーキアの分離】R5年度に行ったMGとMT解析から,水素資化性メタン生成アーキアのアルカン分解メタン発酵への寄与も考慮する必要がある。アルカン分解細菌からDIETでエネルギー(電子)を得ている可能性もあることからも,これらの分離培養を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
メタゲノム・メタトランスクリプトーム解析の結果の考察が不十分だったため,発表予定であった学会への参加を取りやめた。また,他研究との共同利用によって,MinIONによるメタゲノム解析の費用が抑えられた。 次年度使用額で,沖縄で開催されるSakura Bio Meetingで発表する予定である。
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