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2023 年度 実施状況報告書

植物の食害特異的な光シグナルが創出する生物間相互作用に関する基盤的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K05940
研究機関名城大学

研究代表者

上船 雅義  名城大学, 農学部, 教授 (90559775)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード生物間相互作用 / 光波長 / 視覚反応 / 天敵昆虫
研究実績の概要

植物が食害特異的な光シグナルを放出するのか明らかにするために、健全トウモロコシ葉とアワヨトウ2、3齢幼虫に1日間食害されたトウモロコシ葉の波長スペクトルを紫外域から赤外域まで測定した結果、紫外域から赤色波長域付近まで食害葉の食害部位は健全葉の健全部位よりスペクトル強度が強く、トウモロコシ葉は食害特異的な波長スペクトルの光を発していることが明らかとなった。さらに、健全インゲンマメ葉とナミハダニに5日間食害されたインゲンマメ葉の波長スペクトルも測定した結果、ほとんどの波長域で食害葉の食害部分は健全葉の健全部分よりスペクトル強度が強く、インゲンマメ葉も食害特異的な波長スペクトルの光を発することが明らかとなった。
光波長とその強度が天敵昆虫の光シグナルに対する反応に与える影響を明らかにするために、空腹度の異なるカリヤコマユバチ雌成虫(6時間空腹、2時間空腹、満腹)を用い、3段階の光強度(低、中、高)の青、緑、黄、赤の各LED光に対する反応を調べた。その結果、緑色光と黄色光に対して雌成虫は、空腹度と光強度の条件に関わらず反応し、誘引された。青色光に対する雌成虫の反応は空腹度が低くなるにつれ強まり、6時間空腹時は光強度高の光のみ、2時間空腹時は光強度中と高の光、満腹時はすべての光強度の光に誘引された。赤色光に対する雌成虫の反応は、すべての空腹度と光強度の条件で見られなかった。これらの結果から、カリヤコマユバチの視覚反応には光波長だけでなく、光強度と空腹度が影響を及ぼすことが分かった。さらに、コナガコマユバチ雌成虫を用いて同様の実験を行ったところ、本種雌成虫は、緑色光と赤色光は同属のカリヤコマユバチ雌成虫と同じ反応を示したが、青色光と黄色光に対しては、光強度と空腹度の条件によりカリヤコマユバチと異なる反応を示し、同属であっても寄生蜂は視覚反応が異なることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定していたトウモロコシとアワヨトウ幼虫の系だけでなく、インゲンマメとナミハダニの系も追加して、植物が食害特異的な光シグナルを放出することを明らかにした。また、天敵昆虫の光に対する反応も、紫外線の光に対する成果は出せていないものの、計画していたカリヤコマユバチに加え、同属のコナガコマユバチに関しても研究成果を出せた。これらのことから順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

植物の食害特異的な光シグナルの調査においては、食害を受けた植物の食害部位や健全部位などの部位別に波長スペクトルを評価していく。また、アワヨトウ幼虫の波長スペクトルも測定し、植物の波長スペクトルと比較していく。カリヤコマユバチとコナガコマユバチの視覚利用が異なることが明らかになってきたことから、コナガコマユバチの寄主であるコナガが食害するアブラナ科植物も波長スペクトルも評価することを計画に新たに加える。
天敵昆虫の光対する反応については、紫外線のLED光に対するカリヤコマユバチで反応を調べていく。また、満腹時と空腹時に反応した光波長のLEDを用いて、光強度の強弱にかかわらず特定の波長をカリヤコマユバチが選好するかどうかを調べていく。

次年度使用額が生じた理由

研究をスムーズに行うため、植物栽培の資材や昆虫飼育の資材を年度末にも継続して購入できるように、予算を5万ほど残しておいた。次年度に、植物栽培の資材や昆虫飼育の資材の購入のこの残額を使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 植物は食害特異的なスペクトルの光シグナルを発するのか2024

    • 著者名/発表者名
      千野陽平、米谷衣代、上船雅義
    • 学会等名
      日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会の合同大会
  • [学会発表] 空腹度と光波長,光強度がコナガコマユバチの光応答に及ぼす影響2024

    • 著者名/発表者名
      服部峻、千野陽平、上船雅義
    • 学会等名
      日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会の合同大会

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公開日: 2024-12-25  

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