研究課題/領域番号 |
23K05951
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
南 陽一 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任准教授 (40415310)
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研究分担者 |
田中 秀樹 広島国際大学, 健康科学部, 教授 (30294482)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 睡眠覚醒リズム / 加速度計 / 社会的時差ぼけ |
研究実績の概要 |
2023年度には、加速度データをもとにした子どもの睡眠・覚醒解析を進めた。1週間にわたりサンプリング頻度50Hzで取得した3軸の加速度データをもとに、教室が開発した睡眠・覚醒判定アルゴリズム(ACCEL)によって30秒ごとに睡眠と覚醒の二状態を判定した。統計ソフトRを用い、20エポック毎のデータを積算し、10分毎のデータとして整理し直し、個人のデータをよりわかりやすい形で可視化し、一瞥して特徴をつかめるように工夫し、解析の自動化を進めた。また、30秒毎のデータをそのまま利用し、既報(Katori et al. PNAS, 2022)にある睡眠の特徴量や概日リズムの特徴量が抽出できるようにプログラムを組み、10分毎のデータから見られる傾向を、詳細に解析するためのプラットフォームを構築した。 東京都の小学生・中学生のデータを中心に解析を進め、小学生930名、中学生197名、及び社会人(成人)346名のデータ解析を試みた。平日は学年を追って平均就眠時刻が遅くなっており、小学1年生の就眠時刻の平均値は約21.7時、中学3年生の平均値は約23.7時だった。休日も同様の傾向であったが就眠時刻が20分程度遅くなる傾向にあった。起床時刻は小学生も中学生も平日はほぼ一定で7時であったが、中学生ではやや遅くなっていた。休日は小学生、中学生とも起床時刻が遅くなり、小学生では7時半から8時、中学生ではほぼ8時以降になっていた。睡眠時間は小学生では9時間程度、中学生では8時間程度であり、半数程度の子どもが厚生労働省の健康づくりための睡眠ガイド2023の推奨する睡眠時間を満たさなかった。現在は、社会的時差ぼけに関する解析を進めている。共同研究者の田中は、定期的なミーティングを通じて解析についての議論を深め、研究の方向性について検討を重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
客観データの解析について、2023年度中に解析のプラットフォームを構築出来たと考えており、想定以上の進捗があった。実際に、小中学生のデータを解析し、比較検討することで客観データとして、子どもたちの睡眠の現状を詳らかにし、就眠時刻の遅れが不十分な睡眠時間の主因となっていることを指摘した(第101回日本生理学会学術大会)。社会的時差ぼけについても解析を進めており、プレリミナリーではあるが、ほとんどの子どもたちは平日と休日の睡眠の中央時刻の差(=社会的時差ぼけ)は30分程度であるが、一定の割合で注意が必要とされる2時間以上の子どもがいることが見えてきている。 客観データの解析プラットフォームの開発に注力した結果、主観的データのとりまとめにはやや遅れが出ている。しかし、客観データ解析プラットフォームを援用することで同じ解析が可能な状況ができているためキャッチアップできるものと考えている。このため、総合的に見た場合に、進捗状況としては概ね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の実施内容で、解析のプラットフォーム、特に睡眠指標の抽出と可視化のプロセスは達成できたと考えている。2024年度には、抽出されてきた指標間の関係性により注目し、社会的時差ぼけの大きさ(睡眠中点がずれる時間の長さ)によって、他の睡眠指標(就床・起床時刻、睡眠時間、睡眠効率など)にどのような影響があるのか、詳細な解析を進めたい。また、新規に加速度計を購入してデータ計測の体制を強化していく。加えて主観データの可視化にも取り組み、特に平日と休日とのずれの観点から、客観データと主観データとの間にどのような違いがあるのかをみていく予定である。 本研究内容については、社会との関わりを考える観点も重要だと認識している。共同研究者の田中は睡眠教育の領域で活躍を続けており、田中、および関連する研究者とのディスカッションを通じて、将来的な成果の社会還元の可能性についても議論を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度については、解析プラットフォームの開発に時間を費やした。解析環境を整えることを中心した結果、共同研究者の田中との会議、学術大会での議論のための経費が支出の主となり、計画を下回る支出となった。しかしながら2024年度初に加速度計を購入して計画を強く進める考えであり、昨年度に支出できなかった予算はこのための支出に充当する考えである。
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