研究課題/領域番号 |
23K05974
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平岡 優一 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (00778681)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アストロサイト / direct conversion |
研究実績の概要 |
小脳アストロサイトから神経細胞へのdirect conversionを行う方法を検討するため、アストロサイト特異的Ptbp1欠損マウスを作製し、その欠損によってアストロサイトから神経細胞へのconversionが起きるのかを評価した。既存の論文ではPtbp1発現制御によって中脳/網膜などで神経細胞への分化が報告されていたが、今回解析したPtbp1欠損マウスではPtbp1発現が減少していることがウェスタンブロットや免疫組織化学染色などではっきりと確認出来ているにも関わらず、既報の神経細胞への分化は全く観察されなかった。解析を実施している最中に、他の研究者からもPtbp1欠損が神経細胞分化を誘導しないことを示す報告( Nature. 2023 Jun;618(7964):E1-E7)がなされ、既報で見られた現象がPtbp1欠損により一義的に起きてはいないことが強く示唆された。これまでにPtbp1制御を用いてdirect conversionを示している報告ではウイルス感染や薬剤による神経脱落などを伴った実験を行っているため、これらの外的要因が重要である可能性を考慮し、今後Ptbp1に加えて共通するメカニズムである炎症応答因子に着目して新たな因子の探索を行っていく予定である。アストロサイト特異的Ptbp1欠損マウスの特定脳領域に対して炎症応答を誘導する薬剤(LPSなど)や神経脱落を起こす薬剤ジヒドロカイニン酸などを局所投与し、これらの操作によりDirect conversionが起こるかを検証する。また、これまでに報告された欠損によって神経分化誘導に寄与することが知られる遺伝子群のガイドRNAライブラリを作製し、ウイルスベクターをもちいてKOスクリーニング実験を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
既報で観察されたPtbp1欠損によるアストロサイトから神経細胞へのdirect conversionが、既報よりも厳密な実験系である遺伝学的手法を用いたにも関わらず全く観察されなかった。同様の報告は他の研究者からも挙げられている( Nature. 2023 Jun;618(7964):E1-E7, Cell Rep. 2022 Jun 14; 39(11): 110849.)ため、過去の報告で観察されたPtbp1発現制御による神経細胞へのdirect conversionはPtbp1発現低下に加えて別の因子も寄与している可能性が強く示唆された。その因子の同定のため、当初計画を変更して新たなスクリーニング実験などを検討する必要が生じたために進捗に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにPtbp1制御を用いてdirect conversionを示している報告ではウイルス感染や薬剤による神経脱落などを伴った実験を行っているため、これらの外的要因が重要である可能性を考慮し、今後Ptbp1に加えて共通するメカニズムである炎症応答因子に着目して新たな因子の探索を行っていく予定である。アストロサイト特異的Ptbp1欠損マウスの特定脳領域に対して炎症応答を誘導する薬剤(LPSなど)や神経脱落を起こす薬剤ジヒドロカイニン酸などを局所投与し、これらの操作によりDirect conversionが起こるかを検証する。 また、これまでに報告された欠損によって神経分化誘導に寄与することが知られる遺伝子群のガイドRNAライブラリを作製し、ウイルスベクターをもちいてKOスクリーニング実験を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった試薬が納期の都合で3月にキャンセルになったためその分の金額が次年度使用として繰り越された
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