研究課題/領域番号 |
23K05987
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂元 一真 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (60612801)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 軸索ガイダンス / コンドロイチン硫酸 / ヘパラン硫酸 / PTPRσ / ALK |
研究実績の概要 |
本研究では、視床下部ー下垂体系の神経内分泌経路における神経活動・軸索投射のメカニズムをALKおよしPTPRσという2つの細胞膜糖鎖受容体と、へパラン硫酸・コンドロイチン硫酸という糖鎖ガイダンス分子から明らかにしようとするものである。 本年度は特にALKの下流分子を明らかにする目的で、初代培養神経細胞において近位依存性標識法を実施し、LC-MS/MSによってALKの相互作用分子としてPI5P4Kaを同定した。PI5P4Kaは膜リン脂質PI5PからPIP2を生合成する酵素であるが、ALKはPI5P4Kaを直接チロシンリン酸化し、この活性を上昇させることを明らかにした。さらに、PI5P4Ka上のリン酸化候補チロシン残基をアラニンに変換したアミノ酸置換体を用意し、PI5P4Ka上のリン酸化チロシン残基を同定した。以上の結果から、ALKはPI5P4Kaを直接リン酸化し、PIP2の生合成を制御していることを明らかにした。 一方ALKノックアウトマウスを再解析したところ、青斑核にALKの発現が強いこと、またノックアウトマウスにおいては本領域における交感神経活性が強いことを明らかにした。またこれと一致して、初代培養細胞においてALKを阻害することにより、グルタミン酸刺激によるカルシウム流入が増強された。PIP2は電位依存性カリウムチャネルを活性化し、神経細胞の過興奮を抑制することから、ALKがPIP2の生成を介して神経活動を負に制御していることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALKの新規基質としてPI5P4Kaを同定し、脂質合成の制御と神経活動の制御という新規の現象を明らかにすることができたものの、計画していた視床下部ー下垂体系における解析に遅れが生じているため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度明らかにしたALK-PI5P4Ka-PIP2という経路が青斑核において神経活動を制御しているかどうかをin vivoで確認する。また視床下部ー下垂体系でも同様のことが起こっている可能性があり、これを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究試薬のストック等が十分であったため未使用額が生じた。次年度はin vivoの解析に費用が多く計上されることが見込まれるため、ここに次年度分と併せて使用予定である。
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