研究課題/領域番号 |
23K06005
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
永瀬 将志 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40749462)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 扁桃体 / 脳幹 / 皮質 / 入力統合 / ドパミン |
研究実績の概要 |
恐怖は危険を知らせるアラートとして働くため個体の生存に必須であるが、恐怖記憶の過度の汎化や消去抵抗性は心的外傷後ストレス障害の原因となり大きな問題となる。恐怖記憶に中心的な役割を担う扁桃体は、皮質や脳幹などから嫌悪などの情動入力を受ける。われわれは脳幹の腕傍核に着目し、腕傍核からの入力が強い恐怖情動でシナプス増強を示すこと、同入力の光遺伝学的活性化が人工的恐怖記憶や忌避行動を誘導することを明らかにしてきた。一方、皮質からの入力も情動行動を制御することが知られており、実際に皮質入力が不安様行動や忌避行動を誘導することが報告されている。しかし、個々の入力の役割が解明されてきた一方で、扁桃体への入力がどのように統合されて情動記憶を制御するのか、その統合様式や修飾機構はほとんどわかっていない。そこで本研究では、神経修飾因子としてドパミンに着目し、扁桃体への複数の入力の統合によるシナプス可塑性の誘導機構と入力統合修飾様式を明らかにするとともに、個体レベルでの役割を明らかにすることを目指す。本年度は、cAMPシグナリングの光操作によってシナプス可塑性を誘導するツールを開発し、このツールと長波長シフト変異型光活性化陽イオンチャネルを組み合わせることによって、細胞内シグナル伝達系と神経活動を全て光で操作する技術を報告した (Nagase et al., Cell Rep Methods., 2024)。さらに、ドパミンがシナプス伝達におよぼす作用を電気生理学的に解析して分子機構などを明らかにしたとともに、細胞種によってドパミンの作用が異なる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ドパミン受容体の下流シグナリングのひとつであるcAMPシグナリングを光操作するツールを開発して報告した。ドパミンの作用についても新たな知見を得た。また、入力統合を解析していくための実験系も構築が進んでおり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ドパミンの作用について、薬理学的手法、光遺伝学的手法および電気生理学的手法を用いて詳細な解析を進める。また、本年度開発したツールや実験系を用いて、入力統合の制御機構や修飾様式の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
納品に時間がかかった消耗品があったため次年度使用額が生じた。計画通り消耗品の購入に使用する。
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