研究課題/領域番号 |
23K06016
|
研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
木村 英雄 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 教授 (30321889)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 硫化水素 / ポリサルファイド / 神経伝達 / LTP / アストロサイト / D-セリン |
研究実績の概要 |
硫化水素及びポリサルファイド生合成酵素3-メルカプトピルビン酸イオウ転移酵素(3MST)とポリサルファイドの標的分子トランジェントレセプターポテンシャルアンキリン1(TRPA1)チャネルそれぞれのKOラット脳から神経とアストロサイトの培養細胞を作成し、H2S及びH2Snに対する反応性をCa2+イメージングで測定し、野生型と比較した。グルタミン酸に対する反応性が。各KOラット脳神経では有意ではあるがわずかに減少していた。 脳内在性H2S, H2SnおよびD-セリン量について、 3MST-KO、TRPA1-KOと野生型ラット脳と比較した。具体的には、H2S, H2Snについては、以前行った方法に従い(Kimura et al., 2017)アルキル化剤存在下に脳ホモジネートを調製し、アルキル化剤と結合し安定化したH2SやH2SnをLC-MS/MSを使って定量した。一方、D-セリンについては、Grantらの方法に従い(Grant et al.,2006)、脳ホモジネート上清をHPLCで測定し、定量した。脳内在性H2S及びH2Snはともに、3MST-KOで低く、予想外であったのは、TRPA1-KOでも低かったことである。 これは、TRPA1-KOによって、3MSTレベル及び、その基質3-メルカプトピルビン酸合成に必要なシステイン量が低下していたことによると考えられる。内在性D-セリン量については特に変化は認められなかった。 Duttonらの方法に従い(Dutton et al., 1981)調整したラット浮遊脳細胞に、H2SやH2Snのナトリウム塩であるNa2SやNa2Snを投与し、細胞外液および細胞内のD-セリン量をGrantの方法に従ってHPLC定量した。D-セリンの放出は認められなかったが、予想外に、GABA及びグルタミン酸の放出が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
生後ラット脳からの神経細胞とアストロサイトが予想以上に順調に培養できたため、それらの反応性を測定することができた。またD-セリンやGABA, グルタミン酸を測定する浮遊細胞の調整及びHPLCの測定が順調に進んだ。インビボラット脳からのマイクロダイアリシス及びLTP測定も順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
浮遊細胞では、脳内での配置とは異なり、神経細胞とアストロサイトの相互作用が減弱している。そのため、アストロサイトとの相互作用によって行われる神経細胞からのD-セリンの放出などが的確に把握することが難しい。そこで、TRPA1-KOと野生型ラット脳にマイクロダイアリシスプローブを植え込み、Na2SやNa2S2を溶解した緩衝溶液で海馬CA1領域を還流し、刺激により放出されたD-セリンを同じマイクロダイアリシスプローブから回収し、HPLCによって測定する。 3MST-KO,TRPA1-KOと野生型6週令ラット海馬スライス(厚さ400 マイクロm)を作成し、CA1/CA2境界領域の放射状層を頻回電気刺激しLTPを誘導する。CA1領域ピラミダル細胞層から細胞外記録を行い、3MSTとTRPA1チャネルのLTPへの影響を調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
3種類のノックアウトラット脳からのサスペンジョン細胞調整、インビボマイクロダイアリシスなどの実験が失敗なく順調に進み、消耗品費を抑えることができた。学内業務の都合により学会出席ができなかったため、旅費の支出がなかった。また、論文掲載料免除により、その他の支出も抑えることができた。
|