研究実績の概要 |
本研究では、心臓アセチルコリン産生系を活性化する物質を創製し、新規メカニズムに基づく心疾患治療薬へと展開することを目的とする。、研究代表者らは心筋細胞がアセチルコリンを産生する経路を活性化する物質が心機能を改善する薬物になり得ると考え、S-Nitroso-N-acetyl-D-penicillamine(SNAP)類縁体を系統的に合成し、より活性の高い化合物を見出すことを目指している。初年度は、SNAPのN原子を修飾するアシル基(R-CO-)のRを長い直鎖アルキル基に変えたSNVP, SNHP、分枝アルキル基に変えたSNPiP, SNBAP, SNDBP、環状アルキル基に変えたSNcHP, 芳香族に変えたSNBP, SNpTP, SNoTP, SN1NP, SN2NPなどを合成した。これらの中で、アセチルコリン誘導能が最も高かったのはSNPiPであった。他のSNAP類縁体は、いずれもSNAPよりは効果的ではあったが、SNPiPには及ばなかった。 さらに、新規に合成したこれらSNAP類縁体のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、25℃での半減期を調べた。いずれの誘導体もSNAPの半減期より長くなっていたが、特にSNPiP、SNBAPでは10倍以上の延長が見られた。しかしながら、最も半減期が長かったSNBAPが最もアセチルコリン誘導能が高いわけではなく、半減期そのものが活性と相関があるわけではなかった。 また、PBSにヒト血清アルブミン(HSA)を加えたところ、いずれのSNAP類縁体も半減期が著しく増大した。このことから、SNAP類縁体はHSAと強く結合して、高い脂溶性の環境下に置かれることになり、そのことにより徐々にNOを放出できるのではないかと推測された。
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