研究実績の概要 |
ペプチドは人体の構成要素の一つであり、ホルモンなどの機能性分子として生体内で様々な機能を果たしている。そのため、ペプチドに着目した化学および生化学的研究が広く進められている。近年では、タンパク質間の相互作用を阻害するペプチドの開発や、膜透過ペプチド(CPP, Cell-penetrating peptide)を利用したマクロ分子の細胞内導入法といった応用研究が報告され(Futaki et al. J. Biol. Chem., 2001, 276, 5836. )、ペプチド分子の機能化は魅力的な研究課題の一つである。申請者はこれまでに、CPPsの二次構造制御による膜透過能への効果に関する研究を行ってきた。そこで、申請者は安定なヘリカル構造を形成するペプチド1をオリゴアルギニンに連結させることで、オリゴアルギニン部分にもヘリカル構造を形成させることが可能であることを見出した。また、Blockペプチドは高い細胞膜透過性を示し、siRNAを細胞内に効率的に導入可能であることを明らかにした(Chem. Commun. 2019, 55, 7792.)。当該年度では、ヘリカルテンプレート構造の最適化を目指し、多様なジ置換アミノ酸の導入を行い、そのペプチド二次構造への影響およびsiRNAデリバリー機能への影響を検討した。その結果、ペプチドヘリカル構造をより安定化させる環状ジ置換アミノ酸 の導入を行うことで、ヘリカル構造が安定化される一方で、高い疏水性による細胞毒性の向上が認められた。そこで、より詳細に検討するために、環サイズを変更したヘリカルテンプレートをデザイン合成した。その結果、ヘリカル構造の形成がsiRNAデリバリーに重要な役割を担っていることが明らかになった。
|