研究実績の概要 |
現在、アミドは専らカルボン酸とアミンに対し縮合剤を作用させて合成されるが、カルボン酸に対して量論量以上の縮合剤を投入する必要がある点、付随して縮合剤に由来する量論量以上の廃棄物が生成する点が大きな問題となる。そのためグリーンケミストリーの観点から、量論量の試薬を排したカルボン酸とアミンの触媒的脱水縮合が古くから研究されている。本研究では、B3NO2型ヘテロ6員環を有する1,3-Dioxa-5-Aza-2,4,6-TriBorinane (DATB) のアミド結合形成触媒能に着目し、本年度は工業的応用を視野に入れた触媒活性のさらなる向上とDATBの触媒機構に着目した新規触媒反応の開発に取り組んだ。具体的には、DATB分子内に基質であるカルボン酸またはアミンの認識部位を組み込んだ新規基質認識型DATBの開発を目指した。最近開発したDATBの改良合成法を駆使することで設計した触媒の多くは実際に合成可能であり、モデル基質を用いた触媒活性評価を実施した。現在のところ、オリジナルのDATBを凌駕する活性を有する誘導体は見出していないが、今後さらなる誘導体化により構造活性相関を精査することで、高活性触媒の導出を目指す。また、これまで未開拓であったDATBを用いるアミド化以外の触媒的合成法の開発を志向し、本年度は遷移金属触媒との協働を念頭に、金属配位部位を導入した複合機能型DATBの創出に取り組んだ。これまでに、遷移金属に配位可能な官能基を有するいくつかの誘導体を合成しており、一部については数種の金属塩との錯形成を示唆する実験結果が得られた。今後金属錯体を用いた新規触媒的分子変換の開拓を目指す。
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