研究課題/領域番号 |
23K06055
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
杉山 亨 帝京大学, 薬学部, 准教授 (40242036)
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研究分担者 |
森谷 俊介 帝京大学, 薬学部, 助教 (60717544)
出水 庸介 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 部長 (90389180)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | ペプチド核酸 / ストランドインベージョン / アンチジーン / 核酸医薬 |
研究実績の概要 |
PNAはDNA/RNAに非常に強く結合し、この強い結合力に立脚した「ストランドインベージョン」というユニークな結合様式が可能である。しかし、現状では標的にできるDNAの塩基配列は限られている。擬似相補的AT塩基対をもつ擬似相補的PNA(pcPNA)の開発によって配列制限は大幅に緩和されたが、擬似相補的GC塩基対の開発は困難でまだ誰も成功していない。本研究は、この配列制限の克服を目的に4塩基すべてを人工塩基に置き換えた完全擬似相補的なPNAオリゴマーの合成を目指している。 当研究室では先に、Gに替わる人工塩基としてpreQ1をもつPNAを報告している。2023年度は1)preQ1のストランドインベージョンへの効果を検証するとともに、2)Cに対応する人工塩基の合成を進めた。 1)ホモプリン配列および混合配列にpreQ1を組み込んだ2系統のPNAオリゴマーを複数合成した。固相合成におけるpreQ1モノマーの溶解性、反応性は良好で特にトラブルはなかった。二本鎖DNAに対するストランドインベージョン能を調べたところ、導入するpreQ1の数に応じてストランドインベージョンが促進されること、DNA結合は可逆的であることが確認された。 2)Cに対応する人工塩基の構造は申請書の通りであるが、特許申請の可能性があるため詳細は控えさせていただく。2023年度は、文献を参考に人工塩基部分の合成について2通りの合成戦略を検討した。しかし、当初は全く反応が進行しないか、反応が進んでも複雑な混合物となってしまった。基質の構造や反応条件の検討に多くの時間を費やしたが、最終的に合成上の問題を解決する目処がついた。一方、PNAモノマーの骨格部分はすでに報告したやり方で合成済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では擬似相補的GC塩基対の開発を中心に据えているが、新規人工塩基の導入による単一分子PNAのストランドインベージョン能の向上についても調べている。2023年度の研究では当研究室で開発したpreQ1を組み込むことでPNAオリゴマーによるduplex invasionが促進されることが確認された。また、preQ1と対をなす擬似相補的人工塩基の合成も問題点解決の目処がつき当初の目標に向かって順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
混合配列PNAよるストランドインベージョンがpreQ1の導入によって促進されることが確認されたので、その応用を検討する。また、擬似相補的GC塩基対のためのCアナログの合成も継続し、PNAモノマーの完成を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で使用する市販のPNAモノマーは高額なため予算の多くを占めている。2023年度は別の予算でPNAモノマーを十分量購入できたためその分の予算を2024年度 に繰越した。2023年度はシトシンアナログ合成の条件検討に多くの時間と労力を費やし、試薬の消費が想定よりも少なかった。次年度もシトシンアナログをもつPNAモノマーの合成を継続する予定であるが、大きな問題点は解決済みなので大量合成に移る予定であり、使用する試薬が大幅に増える見込みである。preQ1モノマーの大量合成も行なう予定であり、 擬似相補的GC塩基対の性能評価を行う予定である。PNAオリゴマーの合成には市販のPNAモノマーも合わせて使用する。結合評価には大量のDNAオリゴマーが必要 であり、繰越分は当初の計画通り合成原料とカスタムDNAの購入に使用する予定である。
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