研究課題/領域番号 |
23K06069
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
原田 努 昭和大学, 薬学部, 准教授 (20773930)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | とろみ水 / OD錠 / フィルムコーティング / 崩壊剤 / 崩壊遅延 / Cryo-FIB |
研究実績の概要 |
高齢者の誤嚥を予防するために用いられる嚥下補助食品(とろみ水)は、特にOD錠の崩壊・溶出を遅らせ、薬物の吸収を低下させるリスクがある。そこで本研究ではまず市販のドネペジルOD錠に流動層コーティング装置MCD-2(Caleva)によりヒプロメロース(オパドライTM)をコーティングし、とろみ水が錠剤内に浸透するのを防止する効果を調査した。コーティングには一定の効果は認められたが十分ではなく、崩壊剤の種類によって効果のバラツキが顕著にあった。 崩壊剤が錠剤の崩壊性に与える影響を調べるため、各種崩壊剤を含有するOD錠を作製した。粉体混合には新規に購入したメカノミル(岡田精工)を用いた。錠剤に水を滴下後に乾燥してクライオ加工し、集束イオンビームで削って断面を電子顕微鏡で観察した(依頼先:東芝ナノアナリシス)。崩壊剤のない錠剤は水滴下前後で内部に大きな変化が見られなかったのに対し,クロスポビドン含有錠内には水路が形成されたような空隙が見られ,Wickingによる崩壊機構が推測された。でんぷんグリコール酸Na含有錠の内部では水滴下後に大きな空隙が多数出現し,Swelling特性による崩壊機構を観察できた。すなわちクロスポビドンは導水型、でんぷんグリコール酸Naは膨潤型であることが明らかになり、とろみ水を引き込まないようにするには膨潤型がよいと考えられた。なお、錠剤内部の崩壊剤の様子を観察した画像は世界的にも珍しいと考えられる。 これらスーパー崩壊剤の配合とフィルムコーティングの両方を行うことで、約30分であった錠剤の崩壊遅延が2分まで改善できた。日本薬剤学会第39年会にて報告する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり進行しており問題ない。
|
今後の研究の推進方策 |
薬物の溶出遅延に対するフィルムコーティングの改善効果はまだ未確認なので今後検証する。また、とろみ水の影響を低減するにはフィルムコーティングに加え、崩壊剤の特性を考慮した錠剤設計が重要であると考えられ、崩壊剤の種類や配合量の最適化を検討する計画である。Cryo-FIBによるSEM撮影で錠剤内部構造の変化の撮影に成功したが、水を乾燥させた後にしか撮影できないので、今後はX線によるとろみ水の浸透を撮影する。
|