研究課題/領域番号 |
23K06071
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
井上 元基 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (90722950)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ラマン分光 / 連続生産 / プロセスモニタリング / 医薬品品質保証 / 含量均一性 |
研究実績の概要 |
本年度は、測定可能な固形剤の条件ならびにラマン測定条件の最適化を行った。なお、有効成分のアモルファスからなる錠剤に混在する結晶を想定したサンプルを調製した。ラマンスペクトル強度におよぼす錠剤厚さの影響を検討したところ、シグナル強度は増加し、最大値を示した後、徐々に減少していく傾向がみられた。圧力増加に伴い、有効成分に由来したピーク強度が小さくなる傾向があった。大きさの異なる結晶粒からなる錠剤についてシグナル強度を比較したところ、粒子が大きいものほどスペクトル強度は大きくなる傾向が見られた。結晶の仕込み割合の異なる錠剤についてラマンスペクトルを測定しPCA解析したところ、サンプル中の結晶の含量の多いものほどスペクトルから求めた含量も高い傾向があった。さらにPLSで解析したところ、0.1s程度のきわめて短い測定時間でも予測値と仕込み割合の誤差(RMSEP)は0.4程度と高い予測精度を示した。賦形剤層(上層)と薬物層(下層)の2層からなる多層錠について検討したところ、従来の後方散乱測定では、錠剤の上下が入れ替わると測定が困難であったが、透過測定では上下が入れ替わっても定量できることが見出された。励起レーザー強度を変更し、ピーク強度を調べたところ強度増加に伴い、得られるピーク強度が上昇した。この技術を用いることで最終製品中における意図しない非晶質から結晶への転移を検出し、品質保証の点において非常に有効であると期待される。また、二層錠のような定量するべきAPIが2種類存在する場合においても、透過型低周波ラマン分光を用いることで2層中の有効成分の濃度を短時間かつ正確に定量できることが確認された。上述の成果は本年度中に論文投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度中に分光条件の最適化を行う予定であったが、まだできていない。この理由として、混合均一性ならびに含量均一性の担保された錠剤を調製するのに多大な時間を要したことに加えて、ノッチフィルターの加工が遅れたためである。2024年度中にノッチフィルターを用意することに加えて、波長の異なるレーザーを用意することで錠剤厚さとレーザー波長との関係を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
均一に有効成分を含有した錠剤を調製するためにスプレードライヤーを用意することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進みが予定より遅かったため、使用額が少なかった。
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