研究課題/領域番号 |
23K06090
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
萩中 淳 武庫川女子大学, バイオサイエンス研究所, 教授 (20164759)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ハロゲン結合 / 分子認識 / 分析科学 / 薬学 |
研究実績の概要 |
ハロゲン結合を利用した新規高機能LC用充填剤(①ハロゲン結合供与体固定化充填剤、②ハロゲン結合受容体固定化充填剤)をポリマー基材およびシリカ基材を用いて調製する予定であった。昨年度は、ハロゲン結合受容体として4-vinylpyridine (4-VPY)、架橋剤としてethylene glycol dimethacrylate (EDMA) およびdivinylbenzene (DVB)を用いて多段階重合法により、粒子径単分散のポリマーを合成した。また、分子インプリントポリマー (MIP)を調製することにより、ハロゲン結合の働くサイトの数を増加させることを試みた。 4-VPYとEDMAを用いて、鋳型分子としてbisphenol A (BPA)、tetrachlorobisphenol A (TCBPA) およびtetrabromobisphenol A (TBBPA) を用いて、それぞれの分子に対するMIPを調製した。また、鋳型分子を用いないで調製した、ノンインプリントポリマー (NIP) も調製した。さらに、tetraiodobisphenol A (TIBPA) を合成し、MIPおよびNIPでの保持、分子認識の評価に加えた。さらに、Gaussian 16Wを用いて、tert-butyl phenol誘導体をモデル化合物として用いた分子間相互作用の解析の結果、鋳型分子と4-VPYとの間には、水素結合、ハロゲン結合およびπ-π相互作用が働いていることが示唆された。これらの相互作用エネルギーとBPAおよびその誘導体のlog kとの相関は、MIPおよびNIPで良好であり、I原子、Br原子、Cl原子と4-VPYとの間には、ハロゲン結合が働いていることが示唆された。また、MIPを調製することにより、NIPに比しハロゲン結合の働くサイトの数を増加させることが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、新規高機能LC用充填剤として、①ハロゲン結合供与体固定化充填剤および②ハロゲン結合受容体固定化充填剤を合成する予定であった。しかし、ハロゲン結合受容体である4-VPYと架橋剤であるEDMAあるいはDVBを用いて合成したポリマーが、ハロゲン結合を利用した新規高機能LC用充填剤として働くことを見出し、そのポリマーのハロゲン結合を利用したLC用充填剤への適用あるいは拡張を試みている。また、ハロゲン結合供与体充填剤とMIPとの組み合わせにより、ハロゲン結合の働くサイトの数を増加させることが可能であることが分かった。また、4-VPYあるいは1-vinylimidazole (1-VIM) とDVBを用いて合成したポリマーも、ハロゲン結合供与体充填剤として働くことを予備実験的に明らかにしている。従来計画した研究とは少し違った方向に進んでいるが、ハロゲン結合を利用した新規高機能LC用充填剤から逸脱する方向ではない。ハロゲン結合を利用した新規高機能LC用充填剤の新たな方向性が見出せるのではないかと思い、研究を継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ハロゲン結合を利用した新規高機能LC用充填剤の新たな方向性として、ポリマー基材に着目して研究を進める。昨年度は、ハロゲン結合受容体として4-VPY、架橋剤としてEDMA用いて多段階重合法により、粒子径単分散のポリマーを合成した。今後は、ハロゲン結合受容体として、1-VIM、 methacrylic acidを架橋剤として、EDMA、DVBを用いたポリマー(MIPおよびNIP)を調製して、ハロゲン結合供与体と試料との間のハロゲン結合の寄与を明らかにしていきたい。 さらに、本研究の当初の目的である、1)ハロゲン結合を利用した新規高機能LC用充填剤(①ハロゲン結合供与体固定化充填剤および②ハロゲン結合受容体固定化充填剤)をポリマー基材およびシリカ基材を用いて調製する、2)ハロゲン結合を利用した新規高機能LC用充填剤の調製の最適化を検討する、3)調製した充填剤を①ハロゲン結合受容体化合物および②ハロゲン結合供与体化合物の高機能分離に適用することを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、機器備品 (LC) を購入予定であったが、既設のLCを修理することにより使用したため、次年度使用額が生じた。次年度は、物品費、旅費として使用予定である。
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